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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二十話 内乱への道 (その3)
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俺はともかく、あとの二人は受け入れられるだろうか?
俺は隣に座っているヴァレンシュタインを見た。俺の視線に気付いたのだろう。こちらを見ると微かに笑いを見せた。彼は既にこの状況を想定している! 対策も考えている!
「ゲルラッハ子爵、反乱軍の征服を止める事はできません。なぜならこのまま反乱軍との戦争を続ければ帝国は崩壊してしまうからです」
「!」
ヴァレンシュタインの“崩壊”という言葉に皆驚いて彼を見つめた。
「毎年百万から三百万近い成人男性が戦死しているのです。それが何を意味するか分りますか?」
「……」
「帝国内では結婚できない女性が増え続けているんです。当然生まれてくる子供も減り続けている。父や夫、息子を失った女子供たちの中には生活する事が出来ずに農奴に身を落とす人間もいるんです」
確かにそうだ。俺も一つ間違えばそうなっていただろう。貴族とは名ばかりの爵位も持たない帝国騎士の家に生まれ、酒に溺れ子供を顧みない父を持った。
残された姉さんと俺、あのままだったらいずれ生活できなくなり俺も農奴になっていたかもしれない……。姉さんが抵抗もせず後宮へ行ったのもそれが分っていたからかもしれない……。俺は姉さんに救われた。だから今度は俺が姉さんを救う、そう誓った。
「銀河連邦時代の事ですが人類は三千億人いました。しかし今では帝国には十分の一にも満たない人間しかいません。戦争だけが人口減少の原因ではありませんが、このまま戦争を続ければ益々人口は減少し、帝国は国家としての機能を維持できなくなるでしょう。崩壊です」
「ならば、和平は」
喘ぐようにゲルラッハ子爵が言葉を出した。よほど政治改革をしたくないらしい。それほどまでに貴族の特権が大事か、愚かな……。
「和平を結ぶという事は、反乱軍を自由惑星同盟という対等の国家として認めるということです。ゲルラッハ子爵、出来ますか、それが?」
「!」
静かな声だった。しかしヴァレンシュタインの声に応接室は沈黙した。それほどまでに彼の言っている事は重い。帝国が対等の国家を認める、そんなことは有り得ない。それこそ貴族たちは反発するだろう。こちらを排斥する口実を与えるようなものだ。
「それに和平など何の意味もありません。かえって混乱するだけです」
「?」
ヴァレンシュタインの言葉に皆訝しげな表情をする。和平に意味が無い……。どういうことだ。
「和平を結べば、当然国境を開放する事になります。反乱軍の領内から多くの商人がイゼルローン回廊を使って帝国に来るでしょう。フェザーンを経由するより帝国と直接商売をしたいと思う商人が出るはずです」
「……」
「彼等が持ってくるのは商品だけではありません。彼等は民主共和制という思想も持って来るでしょう。辺境星域で平民たち
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