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八神家の養父切嗣
五十九話:Snow Rain
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ただろう。ならば、自分は一体いつ過去の人々を生き返らせたいなどと願ったのだろうか。


 ―――ねえ、私を助けてよ、ケリィ。


 ハッと息を呑む。思い出されるのは夢で逢った彼女のこと。全ては彼女を殺せなかったことから始まった。否、彼女を救うことを諦めた時からこの地獄は始まった。何度も何度も罪のない人を殺してきた。その度に思った。彼らを―――救いたかったと。

 ―――君達を助けることができるのなら。もしも、生き返らせることができるのなら。

 ―――その時はやっと死ねるかもしれないね、ケリィ。

 この十年間何度も死にたいと願った。しかし、それは許されなかった。妻のために生きていたのではなく生きなければならないという義務感だけで生きてきた。生きて何をしようとしていたのかようやく気付く。世界を救うなど二の次でしかなかった。ただ、衛宮切嗣は。

「僕は……殺してきた人達に―――生きていて欲しかった」

 殺した者達に人並みの生を謳歌して欲しかった。奪った生を返し笑っていて欲しかった。何よりも自分は彼らに―――


「―――罰して欲しかった」


 罪を償いたかった。項垂れたまま切嗣は思いの丈を吐き出す。それは世界を救うという行為とはかけ離れている。醜い私欲だ。贖罪ですらない。世界を救うという大義名分に紛れさせ我欲を叶えようとしていた。また人を殺して、また娘を殺そうとして。罪を償うために罪を重ね続けた。

「はぁ……やっと気づいたな、おとん? アインスも気づいとったんなら止めんと」
「私は切嗣に地獄の底までついていくと決めていたので……ただ傍にいることを決めたのです」

 アインスの慈愛に満ちた言葉に切嗣はどうしようもなく自分が嫌になる。こんな自分勝手な理由に彼女は文句ひとつ言わずについてきてくれたというのに自分はそのことに気づきもしなかった。やはり自分は彼女に愛される資格などなかったと後悔する。

「ああ……僕は結局、罰が欲しかっただけ。償いがしたかっただけ。……愛される資格なんてない」

 はやての目を見つめることも、アインスと語ることもできずに下を向いたまま頷く。気づく前であればエゴを貫いてでも願いを叶えるつもりではあったが、このような自分以外救われない願いは願えない。曲がりなりにも世界の救済を願った以上それはできない。

「やから―――ええかげんにせーや!」
「ッ!?」

 今度は強烈なデコピンをまともに食らい思わず目に涙が滲む。ユニゾンしているアインスにもダメージが入ったのか何やら声を上げているがはやては気にしない。

「いつまでもうじうじと悩んで自分を卑下してばっかりやな、ホンマ」
「で、でも、実際に僕はどうしようもない人間だろう。誰も救えないだけでなく、だれかを傷つける。
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