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身体は男でも
6部分:第六章
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「凄い話だよ」
「そうなったのはどうしてなのかしら」
 首を傾げさせてだ。アッチャカラーンは同僚達に尋ねた。
「私があの人に全て受け入れてもらえたのはどうしてかしら」
「ううん、そうだな」
 ここでだ。同僚の一人がだった。腕を組んで考える顔になってだ。
 その顔でだ。こうアッチャカラーンに述べた。
「御前が素直だったからじゃないのか?」
「素直って?」
「御前自分が身体は男だって正直に言ったよな」
「ええ」
 このことは最初から決めていることだった。隠しても何にもならないと思ったからだ。
 だがそれによってだとだ。その同僚は言うのだった。
「そのことはね」
「だからだよ」
「それでなの」
「はじめに全部言ってそのうえで告白した」
 彼はアッチャラーンのその黒い琥珀の様な瞳、やはり女性のもののその瞳を見ながら話す。
「その素直さと誠実さがその人の心に届いたんだよ」
「だから私はあの人に受け入れてもらえたのね」
「そうだと思うぜ。確かにそのサワリットって人は素晴らしい人だよ」
 外見だけでなく器も併せ持っただ。そうした人物だというのだ。
「けれどな。その人と付き合える御前もな」
「私も」
「その人に相応しいってことだよ。それだけ素直で誠実だからな」
「私特に自分はそうは思わないけれど」
「素直とか誠実は自覚するものじゃないんだよ」
 戸惑うアッチャカラーンにだ。同僚はまた告げた。
「自然と滲み出るものなんだよ。それが御前なんだよ」
「それが私・・・・・・」
「人はその人に相応しい相手を手に入れるんだよ」
 こうも言う同僚だった。
「御前にとってもな。だからな」
「その素直さと誠実さを忘れないで」
「その人と幸せになれよ」
「ええ、わかったわ」
 清らかな、乙女の笑顔でだ。アッチャカラーンは答えた。
「私。あの人と幸せになるわ」
「頑張れよ。ずっとな」
 同僚達はその笑顔のアッチャカラーンに笑顔で告げた。そうしてそのうえで仕事をはじめるのだった。アッチャカラーンは自分の車を丁寧に拭いてから。それから仕事に出た。清らかな笑顔で。


身体は男でも   完


                    2012・3・26

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