暁 〜小説投稿サイト〜
STARDUST唐eLAMEHAZE
第一部 PHANTOM BLAZE
CHAPTER#5
逆襲のシャナ 〜Der Freischutz〜
[2/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
太郎は目の前で俯く少女に再び問いかける。 
「ジョセフと初めて会った「場所」は “ニューヨークの封絶の中” 」 
「!?」
 衝撃。
 悲痛な想いを押し殺すように一息で告げられたシャナの言葉に珍しく、
というより初めて、先刻封絶に取り込まれても冷静な表情を
崩さなかった承太郎の顔に動揺らしき焦りの色が浮んだ。
「む……ぅ……」
 その少女の胸元で、銀鎖で繋がれたアラストールが小さく呻く。
「そう言え……ば……少しは……解る……?」
 シャナは、承太郎を見上げるようにしてその視線を重ねた。
 微かに潤む瞳に、今まで少女が見せたことのない感情が宿っている。
 それは、悲哀と憐憫。
 承太郎の怜悧な頭脳は、シャナの瞳に映る色が意味する事実を残酷に割り出す。
「……だから、ジジイが、どうしたんだ?」
 だが感情はソレを認められない、“認めるわけにはいかない” 
「……」
 シャナは、再び押し黙った。
 その小さな顎が小刻みに震えている。
 それらが「意味」すること。
 最悪の事態を予感した承太郎の背筋を戦慄が劈いた。
「オイッ! テメー! いい加減一体何があったのか言いやがれッ!
オレのジジイが “そこでどうなったんだ”ッッ!?」
 激高した承太郎がシャナの肩を掴んだ。 
 小さなその肩が、震えていた。
 長い髪で表情は伺えない。
 シャナは顔を少し横に向けた後、静かに呟いた。
「……残念だけど……・私たちが駆けつけた時は……もう……」
「何ィッッ!!?」
 驚愕にその美貌が歪む。
 同時に瞳が引きつった。
 形の良い口唇を起点に、やがて全身が震え出す。 
 承太郎の脳裏に遠い日の祖父の顔が浮かんだ。



 太陽のような笑顔。
 皺に刻まれた深い威厳。
 そして豪快な笑い声。
 記憶の中、昔撮られた若き日の写真も合わせて、
ジョセフの過去と現在が混ざり合う。
 そして。
“その記憶は今から消滅する”
 その存在すら、消し飛んでしまう。
 後には、存在の「欠片」も遺らない。
 青年の心に去来する、無明の暗黒。
 そして、絶望。



「………………ジ…………ジジ……ィ…………?」
 全面蒼白の、承太郎の口からようやく漏れた声は、
今までの彼のものとは想えないほどか細く、そして弱々しかった。




……
…………
…………………
「……っくく」
 こらえるような、笑い声。
 それはすぐに、一斉に弾けた。
「ッッあははははははははははははは!!」
 無邪気で明るい笑い声が、風と共に夕焼けに響く。
「アラストール! 見たッ!? 今のコイツの顔!!」 
 心底嬉しそうにシャナは言う。
「……おい……? テメー…………まさ……か……?」

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ