第十六話 神戸を後にしてその十六
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「そのワインにしたの」
「そうだったんだね」
「何本もあるからね」
「何本もって」
「好きなだけ飲んでね」
「そんなに飲めないよ」
優花は姉の言葉に苦笑いになって返した。
「二本が限界かな」
「いいの、二本が限界でもね」
それでもというのだ。
「好きなだけ飲んでね」
「そうすればいいのね」
「そう、そうしたらいいから」
だからだというのだ。
「安心してね」
「それじゃあね」
「そう、好きなだけ飲んでね」
「ううん、それじゃあ」
「姉さんも好きなだけ飲むからね」
「いや、姉さんはね」
優花は姉のその言葉にだ、注意する顔で返した。
「控えないと」
「飲み過ぎにはなのね」
「そうしたことはしないでね」
「今は思いきり飲みたいけれど」
「明日もお仕事だよね」
「ええ、今日はお休み貰ったけれどね」
「だったらね」
それならというのだ。
「控えないとね」
「じゃあ」
「そう、姉さんは控えてね」
「わかったわ、二日酔いにならない位にしておくわ」
「それ位ならね」
飲むにしてもとだ、優花は最大限の譲歩で姉に応えた。
「いいけれど」
「とにかく長崎に行ってもね」
「ええ、頑張るわね」
「そうしてね」
「料理もいいな」
龍馬は刺身や天麩羅を食べつつ言った。
「そっちもな」
「うん、そうだよね」
「じゃあこっちも楽しんでな」
「そしてよね」
「長崎に行けよ」
「そうしてくるね」
「本当に時々行くな」
優花にだ、龍馬は約束もした。
「絶対にな」
「待ってるよ」
「ああ、じゃあ明日行く時には」
その時のこともだ、優花は言った。
「見送るからな」
「姉さんもね」
優子も言って来た。
「だから笑顔でね」
「長崎にだね」
「行って来てね」
「そうするね」
そのことを約束してだった、優花はご馳走とワインを楽しんだ、そして三人での神戸の彼が男としての最後の一日を過ごしたのだった。
第十六話 完
2016・4・5
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