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第一章
新説アリとキリギリス
キリギリスはこの日もです。バイオリンを奏でていました。
そのうえで楽しく過ごしています。けれどその横ではです。
アリ達が必死に働いています。思い餌を運んでいます。そのアリ達にです。キリギリスはこう言ったのです。
「今日も大変だね」
「ええ、今の分だけじゃないですから」
「冬の蓄えもしないといけませんからね」
「それで働いてるんだね」
「はい、そうです」
「冬の分も余計に」
そうしているとです。アリ達はキリギリスに汗水を垂れ流しながら答えます。
「本当に大変ですよ」
「けれど今頑張ればです」
どうなるかと。アリ達は微笑んでキリギリスに答えます。
「冬に生きられますからね」
「冬を越せますから」
「今のうちに働いておくんですよ」
「冬の分まで」
「成程ね。頑張ってね」
キリギリスはそのアリ達に笑顔で応えます。そしてこう言うのでした。
「僕も頑張るよ」
「キリギリスさんもですか」
「頑張られるんですか」
「うん、そうするよ」
笑顔でこう述べます。
「冬の為に今から余計にね」
「そうされるんですか」
「キリギリスさんも」
「僕も冬は駄目だからね」
冬には何もありません。あるのは雪だけです。それでは誰も生きてはいられません。アリ達もそうですしキリギリスもです。だからこそなのです。
キリギリスも冬を見てです。こう言うのでした。
「今のうちに蓄えを作っておかないとね」
「蓄え?」
「キリギリスさんもですか」
「蓄えを」
「うん。冬を過ごす為にね」
まさにその為にだというのです。
「そうしないとね」
「そうですか。じゃあ頑張って下さいね」
「キリギリスさんも」
「うん、僕は頑張るよ」
キリギリスはそのバイオリンを手にして言います。
「じゃあまたね」
「はい、それじゃあまた」
「さようなら」
アリ達はキリギリスにお別れの言葉を告げてです。自分達の仕事に戻りました。そしてです。
自分達の巣に戻ってからです。彼等はキリギリスについてこう話すのでした。
「キリギリスさんああ言ってるけれどね」
「そうだよね。遊んでばかりだから」
「あれで冬の蓄えって言われてもね」
「絶対に何もしてないよ」
「そうとしか思えないよ」
巣の中、地面の下のその細長く入り組んだ穴の中でお話をするのです。
「あの人冬は大変なことになるんじゃないの?」
「絶対にそうなるよ」
「大丈夫かな」
彼等はキリギリスのことが心配になりました。けれど自分達の仕事は冬の分までちゃんとしていくのでした。そうして秋から冬になりました。アリ達はです。
巣の中で寒さも餓えもなくです。落ち着いて暮らしています。
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