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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百十九話 内乱への道 (その2)
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分らないものは無い。
「ヴァレンシュタイン司令長官は策を以って彼らを暴発させ、一気に国内問題を片付けるべきだと考えている」
ミュッケンベルガー元帥が説明を締めくくった。
応接室に沈黙が落ちた。皆一様にヴァレンシュタインを見た。彼らの視線に気付かないとは思えない。しかし、ヴァレンシュタインは伏し目がちに何かを考えている。
「ヴァレンシュタイン、策を聞く前に確認したい。卿は陛下の御命は年内一杯と予測したが、根拠は有るのか?」
エーレンベルク元帥が戸惑うような口調で問いかけてきた。
確かに俺もその点に関して疑問がある。目の前で見るフリードリヒ四世はすこぶる健康だ。年内一杯で死ぬなどとても考えられない。
「有りません。ただ、あの時点では恐れ多い事ですが何時万一の事態が起きても不思議ではありませんでした。それ故、年内一杯と考えて戦ったのです」
「あの時点か……」
あの時点というのはイゼルローン要塞陥落の直後だろうか? 確かにあの当時の皇帝は不摂生な生活によって奇妙に困憊した印象を与える老人だった。いつ死んでもおかしくはなかっただろう。
皆、俺と同じことを考えているのかもしれない。考え込む人間、頷く人間はいてもヴァレンシュタインを非難する人間はいない。フリードリヒ四世は微かに苦笑している。思い当たる節があるのだろう。エーレンベルク元帥が続けてヴァレンシュタインに問いかけた。
「ヴァレンシュタイン、今回の策は陛下が御存命である事を前提に立てるのだな?」
「はい」
「では、卿の策を聞かせてもらおうか」
「その前に一つ確認したい事があります」
「?」
「帝国は今、内乱の危険さえなければフェザーンを占領し、反乱軍を降し宇宙を統一する好機にある。小官の認識は誤っておりましょうか?」
ヴァレンシュタインの言葉に皆、顔を見合わせた。エーレンベルク、シュタインホフの両元帥、ミュッケンベルガー退役元帥等がリヒテンラーデ侯を見て頷く。
「それについては同意……」
「お待ちください、国務尚書閣下」
リヒテンラーデ侯を止めたのはゲルラッハ子爵だった。この男、軍事については素人だと思うのだが、何か有るのだろうか。
「司令長官、反乱軍を制圧するとしてどの程度の軍を率いるのかな?」
「まず最低でも今回と同程度の軍を率いる事になるでしょう」
「遠征の期間は?」
「約一年と考えています」
妥当な線だろう。反乱軍は現在五個艦隊ほどだ。イゼルローン、フェザーンの両面作戦を取るのだろうが往復も入れれば制圧に一年というのはおかしな数字ではない。エーレンベルク、シュタインホフの両元帥、ミュッケンベルガー退役元帥も頷いている。
「私は同意出来ません」
「!」
「財政が持ちません」
財政が持たない、ゲ
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