デブチ
[1/2]
前書き [1]次 最後
｢もう疲れたの｡
待つのはもう､､､懲り懲りなの､
私､お見合いしたんだよ｡
結婚前提にお付き合いを
しようと思うの｡
パパもママも､もう若くないし､
安心させたいの｡
相手は同業者だし､次男だし｡
お婿さんに来てもらって
パパの跡を継いでもらうの｡｣
テーブルの上に
合鍵を置きながら
まるで独り言の様に
早口に話す女は､
…明らかに他人行儀で､､
一度も､､､
こちらを見なかった｡
奴が玄関を出て行く気配を
扉が閉まる音が消す｡
ＣＤはラフの
ピアノ協奏曲第２番､
第１楽章を奏でていた｡
｢……ふん｡｣
リモコンで音量を最大に､
悲劇のヒーロー､みたいな気分で､
ごろんと
ソファーに寝転んだ｡
…いつの間にか
眠ってしまっていた様だ｡
こんな大音量の中､
我ながらよく寝たものだ｡
真っ暗な部屋の中､､､
フルボリュームで､
流れていた曲が止まる｡
…ランダム設定､､､
ＣＤチェエンジャーが
カチャカチャと､､､
そして
始まったのは､ラヴェルの
｢逝ける王女の為のパバーヌ｣
暗い中､ＣＤの
ボリューム表示だけが、
増減する｡
…感傷的な曲だ｡
タバコをくわえて､
聴いていたら､
孤独感が俺を包みこんだ｡
…猛烈に
単車で走りたくなった｡
メットを片手に外へ出る｡
玄関前に無造作に停めた､
単車のシートの上に､猫｡
｢どけや､デブチ｡｣
メインキーをオンして
エンジンに火を点す｡
いつもは
近所に遠慮して空吹かしなんか
しないんだが｡
薄っぺらい月が
バカにした様に
俺を見てやがる｡
デブチと目が合った｡
ふてぶてしい野良猫だ｡
隣の家のブロック塀の
上から俺を見下げてる｡
…癪に障る野郎だし｡
俺がどんだけ吹かしても
脅かしても､
小石を拾って
投げる振りしても､､､
俺を見たまま動かない｡
でも､いつでも逃げれるぜ?
そんな体勢を保ちながら｡
｢ ちっ!ばーか!!｣
もう２〜３回吹かしてから
わざとらしく前タイヤを
ポンと上げて走り出した｡
…旧国から環状線へ､､､､
バイパスへ行こう｡
青信号が続いて気持ちいい､､､
前書き [1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ﾍﾟｰｼﾞ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿ｻｲﾄ〜
利用規約/ﾌﾟﾗｲﾊﾞｼｰﾎﾟﾘｼｰ
利用ﾏﾆｭｱﾙ/ﾍﾙﾌﾟ/ｶﾞｲﾄﾞﾗｲﾝ
お問い合わせ
2024 肥前のﾎﾟﾁ
しおりを解除