19話
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きだと。
それは鈴も否定できない。いや、否定できるものではなかった。鬼一の言葉は自分よりも勝負の世界に身を置いていたからこその言葉。それを容易くできるほど、鈴はまだ強くなかった。
今の一夏に必要なのは一般論でも現実でもない、と鈴は考えている。目の前の唐変木に分からせるには素直に、心から自分の言葉をぶつけるしかないと考えたからだ。
「……誰かが犠牲になることは決して間違いじゃないわ」
「鈴っ!」
鈴の言葉に一夏は激昴した表情で鈴に言葉を叩きつけた。その言葉に鈴は対して動揺した風もなく、平然と言葉を返す。
「勘違いしないで。確かに何も関係のない第三者が犠牲になるなら私だって間違いだと思うわ。それはきっと鬼一もセシリアも一緒よ。同時にそんな状況を何が何でも避けようとするわ。だって犠牲になるのは覚悟を決めて舞台に立った連中でいいし、それ以外の人間を舞台に巻き込むのはもはや理不尽な暴力以外のなにものでもないわ」
結局の所、一夏と鈴たちの違いはそこに集約されていた。
一夏はどんな犠牲も許すことは出来ず。
鈴たちは犠牲は舞台に立った人間だけで完結させるべきで、それ以外の人間を巻き込むことを許さない。
「……っ」
「……私たちは何かを得ようとするために、何かを守るために戦い続けることを自分たちの選択で選んだわ。始まりはもしかしたら偶然だったり、些細なことだったり、もしかしたら人に強制されたものかもしれない」
鈴だって代表候補生の座に座る為に戦うことを決めた。幼馴染に会うという目的のためにだ。少なからず家庭の事情も存在していたが、それでも最後に選択したのはいつも自分だった。
「でもね、その中で数少ない選択肢の中から戦うことを、傷つけることも傷つけられることも決めたのは自分の意志よ」
そして、いつも自分の目の前に立っていたのは自分の意志で選択した連中だけだ。お互い譲れないものがあったからこその必然。そこで傷つけられても恨みはないし、傷つけても恨まれるということはない。
「……鈴、俺はそれが―――」
「いい一夏? 何か勘違いしているようだからハッキリ言っておくわ」
真剣な面持ちで鈴は一夏に向き合う。
「戦いというのは互いがそれぞれ譲れないものがあり、自分だけの問題じゃなく時には沢山の人の思いを託され、その上で傷つけることや傷つけられることを承知した上でその場所に立っているのよ。それを否定することは侮辱にしかならないわ。人から哀れみを受けるために戦っているわけじゃないんだから」
戦いを否定することは出来ないし、許されない。自分の意志で戦っているというのにそれを否定する人間は傲慢でないだろうか。
「その戦いに置いて正しいとか間違っているを論じるのは正
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