暁 〜小説投稿サイト〜
世界最年少のプロゲーマーが女性の世界に
19話
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いけど」

 シールドエネルギーの補給やら壊れた龍砲の修理などが残っている以上は甲龍を出すことは出来ない。

「鈴の動きを見せてもらったんだ。俺だってある程度は見せないとフェアじゃない。今の俺の動きを見てくれ」

「別に今のアンタの動きを見たところで私が有利にも不利にもならないわよ。セシリアや鬼一の試合を見るとアンタぐだぐだ過ぎるもん」

 ぐだぐだ、というよりも一貫性がないというのが正解か。技術から来る拙さであれば鈴は容認していただろう。
 だが、勝利というゴールに対しての道がしっかり通っていないのだ。場当たり的な対応でしか一夏は動けていない。そのことを鈴は指摘した。

「ぐ……」

 一夏としてもそれは理解しているためか反論はしなかった。いや、出来なかった。

「あー、それとこのクラス対抗戦が終わったら私があんたのコーチを務めるから」

「え!? ちょ、ちょっと待てよ鈴! どういうことだよそれ!」

 鈴からの予想外の宣告に一夏は声を荒げた。明らかに焦っている。

「何? 鬼一から頼まれたのよ。クラス対抗戦が終わったらあんたのコーチを担当を頼まれたから。あいつも頼まれたら強力は出来る範囲でやるって」

「……俺の覚えが悪いからか?」

 鬼一から頼まれた。そう聞かされ一夏はショックを受けたように項垂れる。しかし、鈴はそれを否定。

「違うわよ馬鹿。あいつ、今かなり焦ってるのよ」

「鬼一が?」

 考えなかった答えを言われ、一夏は眉を顰める。

「……自分の力の温さを痛感しているわねあいつ。一度、自分の根本から作り直す気みたい。全部バラバラにして、強くなるために色んなところから再構築するようね。何をするつもりかまでは分からないけど」

 鈴にも同じ経験がある。勝負なり戦いの中で唐突に気付かされることを。
 今のままでは自分はダメだ、このままじゃ勝てない、このままじゃ届かない。故に焦りが生まれて、自分の根本から見直すことになる。

「多分、人に構っている余裕もないんでしょうね。約束に関して中途半端なのは気になるけど」

「……鬼一が」

 一夏から見た鬼一は強くなるということに真摯に見える。噂では早朝からトレーニングをして、アリーナでのISの訓練が終わったあとも夜にトレーニングをしていると言う。

 それでも全然足りていないと言うなら、一体自分は何だろうか? 人から言われた範囲でしかトレーニングをしていない。

「ま、あんたは鬼一のことを気にしている暇があったら自分のことを気にしなさい。実力もそうだけど、結局あんたはどうしたいの? 欲張ると全部失敗するわよ」

「俺は……」

 考え始めた一夏に鈴は警告する。

「あと、『零落白夜』を使うのはやめなさい」
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