19話
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結果を見れば鈴が勝利していた。ルールが相手のシールドエネルギーをゼロにすることである以上、鬼神がゼロになった段階で勝敗は決まっている。
だが鈴に勝利したという感覚は微塵も存在していない。
両者共に攻めを得意とする操縦者であり、決して守り勝とうと言う考えは持っていない。
鬼一は理屈と過去の経験から攻めて勝つが最善手だと考えており、鈴は自身の感性と気性から攻めて勝つのが相応しいと考えている。画一的な正解が存在しない以上、どちらが優れているとか優っているというわけでもない。強いて言うなら勝負に勝った方が正解だと言えばいいだろうか。
だが鈴は最後の最後で受身になり、守備的な戦いになってしまった。鬼一が恐れていた『攻撃と守備の比率』を変えられてしまったのだ。そして、鬼一はその守備を超えることが出来なかったのである。
しかし、鈴からみればそんなことは些細な問題であった。
自分が至高としていたスタイルを曲げられてしまい、いや、曲げてしまい、しかも最後は相手のエネルギー切れという結末だったのだ。こんな残滓のような勝利など鈴は胸を張ることは出来なかった。
鬼一の剥き出しの気迫に後退させられた。そのことが鈴を後悔させていた。自分とて生半可な気持ちで戦いに臨んだわけではない。だが、鬼一は鈴以上の気迫を見せた。勝利に喰らいつく執念をだ。
―――……これだけ熱い気持ちをぶつけられたのに、それに応えて上げれなかった……。
ガリ、と奥歯を噛み締める音が口内で反響した。
―――確かに、私たちは勝たなければならない立場にある。そう。確かにそうだけど―――。
結果を求められる立場なのは鈴も鬼一も変わらない。この試合は記録にも残らないような模擬戦であるし、結果を問われるような試合でもない。だが、だからこそ、それ以上に、自分の根底を問われるような試合であった。
それを理解しているのは鈴とセシリアだけではあったが。
一夏は鈴と鬼一が何かを伝えようとしていたのは読み取れたが、それ以上のことは理解できなかった。
そして、鬼一はある意味で誰よりも結果に執着する以上、それに拘ることはない。必要であるならば自分のスタンスを曲げることに躊躇いがないのだ。
―――……自分を曲げて勝っても私は―――!
自分の不甲斐なさに苛立ちを隠しきれない鈴。
何が踏み台になると言うのだ。こんな不甲斐ない自分を見せてどうするというのか。鬼一は鈴に応えたというのに。自分は鬼一にも、一夏にも誇れる姿を見せれなかった。
エネルギーと体力が回復した鬼一がゆっくりと立ち上がる。疲労が回復しきっていないということもあって、その立ち上がる姿は痛々しいものだった。
「……鈴さん、聞こえてますか?」
普
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