暁 〜小説投稿サイト〜
世界最年少のプロゲーマーが女性の世界に
19話
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 鬼一が意識を失っていたのは時間にして、わずか数秒であった。何が起きたのか本人も正確に把握しているわけではなく、身体が地面に横たわっているということだけは理解した。
 故に、倒れていた身体を起こそうとする。全身が震え、四肢が鉄のようにおもかったため立ち上がることは叶わなかった。膝立ちに近い体勢になった鬼一は冷静に状況を確認。

 自分が鈴と戦っていたのはなんとなく思い出せる。そのことに気づいた鬼一は鬼神のシールドエネルギーの残量を確認。そのシールドエネルギーがゼロと表示されていたため、鬼一は自分が負けたことを理解した。

 鬼神はまだ展開された状態だが、エネルギーが尽きているため所謂生命維持を目的とした最低限の機能しか機動していない。このままでは鬼神を飛ばしてピットに戻ることも叶わない。
 パススロットの中から予備のエネルギーパックを取り出して鬼神に接続。身体が震えているからか動きは遅かったが、どこか淡々としたものであった。

 エネルギーを回復している間、鬼一はその敗北を受け入れるように顔を伏せる。負けを受け入れるために、心の中を整理するには多少の時間を要した。負けを受け入れるのに時間がかかるのは、鬼一は勝負師としてまだ未熟であったのだ。

 粛々と、淡々と、鬼一は地面を見つめながら心と身体を落ち着かせる。身体が疲弊しきっている以上、心が身体に引っ張られてしまう可能性があった。要は唯でさえ傷ついている心に追い討ちをかけるような可能性があるのだ。

 それは後々自分の不調にも繋がる可能性があるため、鬼一は速い段階でこの敗北を整理をし終える必要があったのだ。
 そして、試合内容を思い出せないということは自分がそれだけ力を出し切ったという他にならない。つまり、鈴に対して自分の全力が届かったということ。自分の全力が相手を越えられなかった怒りを鬼一はよく知っている。

 悔しくなかったわけではなかった。

 悲しくなかったわけでもない。

 だが、まだ終わりじゃないのだ。ならば、この場でその痛みを表にする必要はどこにもない。しなければならないことは決まっている。

 立ち上がって、もう一度歩くだけのこと。

 ―――……負けたか。

 粛々と、淡々と、鬼一はもう一度心の中で呟く。

 アリーナに表示されている鈴のシールドエネルギー残量を確認。その残量は100を切っていた。鈴も決して余裕のある勝利ではなかったのは間違いなかった。
 現に鈴も全身で呼吸を繰り返しており肩が上下している。それは体力的な部分もあったが、それ以上に精神的な疲労が半端なものではなかったからだ。

 ―――危なかった……。向こうが限界じゃなかったら、こっちが潰されていた……!

 完全に最後は鈴が後手に回されていたのは間違いない。

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