第一部 PHANTOM BLAZE
CHAPTER#4
DETERMINATION 〜決意〜
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ヤツは、
オレ達以外、誰もいない?」
「そ」
シャナは簡単に答えて、また歩き出した。袋からタイヤキを取り出す。
やらないわよ、と横に鋭い視線で訴えるが、
承太郎は何か別の思索に耽っていて自分の視線には気づいていないらしい。
結果的に無視された形になったシャナは、なによ、とムクれて
タイヤキの上半身に噛みついた。
承太郎は、スタープラチナで周囲の雑踏を見渡した。
シャナの言うトーチになった人々を探す。
……血のように紅い夕焼けに染まる街並みの中、
弱々しい灯を内に宿すその 『人の代替物』 は街中に嫌になるほど目についた。
「!」
その視界の端で、また一人、灯が燃え尽きた。
赤いランドセルを背負った小さな子供が、消えた。
傍らには、母親らしき中年の女性がいた。
しっかりと繋がれた二つの手。
その母親の目の前で、鞄も、服も、靴も、余韻すら残さずその子は消えた。
まるで、宙をたゆたうシャボンのように。
しかし、母親はその事に気づかない。
人込みは、変わらずに流れている。
「……ッ!」
承太郎の口中が、ギリッと軋んだ音を立てた。
母親を喰われた子供は、母の帰りをずっと待つのだろう……
子供を喰われた母親は、息子の帰りをずっと待つのだろう……
バケモノに殺された娘や兄弟達の帰りを、家族達はこれからもずっと待つのだろう……
“自分が待っているという事にすら気がつかないまま”
これからも。
ずっと……
「―――ッッ!!」
爪が皮膚を突き破るほど、強く拳を握りしめた承太郎の心中を
敏感に察知したアラストールが、
タイヤキを頬張り始めたシャナの代わりに言った。
「……そう憤るな。我ら “紅世の徒” の中にも、
この世の存在を無闇に喰らうことで世界のバランスが崩れ、
それが我らの世界 『紅世』 にも悪影響を及ぼすかもしれぬと
危惧する者は少なからずいる」
承太郎はシャナの胸元で揺れるペンダント、アラストールを睨んだ。
「我、ら? アラストール……テメーもそのグゼとかいう……
さっきのバケモン共の仲間なのか?」
胸中で渦巻く云い様の無い憤激を、
承太郎は半ば八つ当たりに近い感情でアラストールにブツける。
その瞳に宿る光が、もしお前もさっきの人形達と同じように、
他の人間の生命を「侮辱」し、虫ケラのように嬲り殺すのならば、
オレも一切の容赦はしない。叩き潰すッ! と激しく訴えていた。
「……」
アラストールはその強暴にギラつく眼光を黙って受け止め、おもむろに口を開いた。
「……貴様が出会ったのは “燐子” という、我ら 『徒』 の下僕に過ぎぬ存在だが、
まあ、人間の視点で言えばそのよ
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