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魔王に直々に滅ぼされた彼女はゾンビ化して世界を救うそうです
第8話『理に適った理不尽』
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来ないメイリアに混乱する人々を救う手立ては無く、まず確実に彼女もろとも全滅は免れなかった。
けれども、
彼女
(
スィーラ
)
がいたお陰で、ヴァリアゾードは救われた。そう言っても過言ではないほどの活躍を、人間に協力する意味などある筈のない彼女が見せたのだ。
心の何処かにまだ残っていた警戒心も、知らぬ間に消え去っていた。
──少なくとも、ジークからは。
「──おい、何をしている。ジーク・スカーレッド」
聞き覚えのある声だった。
多分の怒りを含み、少し裏返ったような怒声。静かに、感情を殺すかのように呟かれたその声の主は、殺気を孕んだ眼光をジークに−−否、ジークの腕の中に居るスィーラに向けていた。
騎士の象徴である白銀の鎧と、その胸元に刻み込まれた特殊なエムブレム。こめかみに青筋を浮かべたその大柄な男の名は、ヴァリアゾード専属騎士団団長、エインシェント・ノーレッジ。『墓守の死徒』である
彼女
(
スィーラ
)
に逆恨みから来る多大な怒りを向けていたその男は、今その怒気を殺気へと変えて彼女を見つめていた。
「−−何をしている、と聞いているのだジーク・スカーレッド。さっさとその魔族を殺せ、それが貴様らの任務だろうが」
「……何を言ってる、この子はこの街を救ったんだぞ。人間に対する敵意なんて欠片もない。メイリーから聞いたところによると、お前らも見ていた筈だろうが。前線で彼女が敵を抑えていたところを。この子を殺すつもりはない、神殺しの令を忘れたのか」
「勿論覚えているとも。『死徒が人類に害を成さない限り、あの死徒への手出しを禁ずる』、だったな」
ノーレッジは平然と言い切り、しかし尚もその抑える気も無いであろう殺気はスィーラへと向けている。スィーラも流石に自分に敵意が向けられている事を察したのか、びくりとその体を震わせてジークの背に隠れた。ジークの服を摘む手は相変わらず――否、先程とは別の要因に対して小刻みに震えている。
ますます、その敵意の意味が分からない。
「どういう事だ。分かっているのなら――!」
──けれど、その敵意は。
剣が抜かれる。銀の切っ先は二人へと向けられ、番えられた矢がジークの背に隠れる少女へと向いた
「惚けるのも大概にしろよ、ジーク・スカーレッド……!」
──今この場に居るジークやメイリア、スィーラ以外の。
メイリアが騎士たちにその手を引かれ、ジーク達を孤立させるように騎士団が2人を囲う。
「貴様は、魔族の味方をするつもりかぁッ!」
──町の住人達を含む、およそ全ての人々の。
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