暁 〜小説投稿サイト〜
呪いの指輪
6部分:第六章
[2/2]

[8]前話 [9] 最初
は首を捻ってヒルダに話した。
「あれは」
「大統領の指はなくなったわよね」
「ええ、左手の指はね」
 突如襲い掛かってきたテロリスト、ジンツァーを独裁者と認識する反EU主義者の手によるものだった。こうした考えはEECの頃から存在している。
 その彼のテロでだ。ジンツァーは指を失った。その時にだった。
「指輪をしていた指がなくなったから」
「それでなのね」
「ええ、そうだと思うわ」
 そのせいでだというのだ。
「指輪が。その時に大統領から離れたから」
「だからあの人は助かったのね」
「そう思うわ。ただね」
 指輪による破滅は免れた。だがそれでもだというのだ。
「指輪を失ったから」
「それで英雄でもなくなった」
「EUを導くこともできなくなったのよ」
 破滅は免れた、だが彼は権力の座にもいられなくなったというのだ。
「そうだと思うわ」
「そういうことなのね。つまりは」
「ええ。望むものを与えると共に破滅ももたらす指輪」
 そしてそれがなくなるとだというのだ。
「それがなくなったから」
「大統領は助かったけれど大統領でもなくなった」
「ええ、そうだと思うわ」
 こう話すヒルダだった。母も娘のその言葉に頷く。
 そしてそれから暫く後でだ。ヒルダは。
 あの指輪をライン河の岸辺で見つけた。しかしだ。
 その指輪は指で抓んで河の中に投げ入れた。するとそこから白い女の手が出て来てだ。
 今河の中に入ろうとしている指輪を掴んで消えた。彼女はその指輪を受け取らなかった。破滅も望みもあえて避けたのである。


呪いの指輪   完


                  2012・2・4

[8]前話 [9] 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ