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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百十八話 内乱への道 (その1)
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ろうか? ヴァレンシュタイン司令長官に目を向けると少し困ったような表情をしている。
「ユスティーナ、早く座りなさい」
「はい」
養父に促され隣に座った。一体何を考えているのだろう。なんとも落ち着かない気分だ。黙って二人の話を聞いているしかない。
「陛下にはいつ拝謁するのだ、ヴァレンシュタイン?」
「明日です。今夜、リヒテンラーデ侯、軍務尚書、統帥本部総長と会うことになっています」
「それには私も呼ばれている」
「それは……、知りませんでした」
司令長官の驚いた様子に養父は軽く笑い声を立てた。
「此処に来たのは彼らに会うまでにオーディンの状況を知りたいということか?」
「はい、それと今後の事を閣下に御相談したいと」
シュテファンが飲み物と御菓子を持ってきた。養父と私にはコーヒー、司令長官にはココア。良かった、シュテファンが司令長官にもコーヒーを持ってきたらどうしようと心配だった。
ココアの甘い香りが鼻腔をくすぐる。ヴァレンシュタイン司令長官は美味しそうにココアを飲んでいる。しばらくの間、皆でお茶を飲みながら御菓子をつまんだ。
「おおよその事は軍務尚書より聞いている。大勝利だったそうだな」
「はい、反乱軍に与えた損害は七割を超え八割に近いと思います」
八割に近い……。大勝利だと聞いていたけどそれほどまで……。
「当分、反乱軍は攻勢に出られまい。となると帝国も国内の問題を片付ける時が来た、卿はそう見ているのだな」
国内の問題? 内乱の事だろうか?
「はい、今しかないと思います。時を置けば反乱軍は国力を回復するでしょう。それに、少々厄介な相手を逃がしました」
「?」
司令長官の言葉に養父は問いかけるような視線を向けた。
「ビュコック、ボロディン、ウランフ、そしてヤン・ウェンリー」
名前が呼ばれるにつれ養父の表情が厳しくなっていく。
「少々ではあるまい。ビュコック、ボロディン、ウランフ、私も何度となく煮え湯を飲まされた相手だ」
「……」
「ヴァレンシュタイン、ヤン・ウェンリーというのは例のイゼルローン要塞を落とした男だな?」
「そうです」
しばらくの間沈黙が落ちた。養父も司令長官も互いを推し量るように沈黙している。やがて養父が溜息を吐き、言葉を出した。
「確かに今片付けるしかあるまいな。だが難しいぞ」
「難しい、と言いますと?」
「ヴァレンシュタイン、卿はブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯に内乱を起させ、それを討伐する事でこの問題を解決するつもりだな」
「はい」
「私もこれまでは陛下の死が内乱のきっかけになるだろうと思っていた。しかし今では陛下が崩御されても内乱は起こらぬのではないかと考えている」
「やりすぎましたか?」
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