第一部 PHANTOM BLAZE
CHAPTER#3
RED ZONE 〜封絶〜
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【1】
黄昏時の喧噪。
まるで血のように紅い夕焼けに染まる繁華街とざわめく人の流れ。
その中を、無頼の貴公子が銜え煙草で練り歩く。
周囲の人間は洪水のような人混みを掻き分けるのに難儀していたが、
彼にその必要はなかった。
あらゆる要素に誘発されて増大した彼の圧倒的存在感を前に、
気圧された人間が勝手に道を空けるからである。
その人物、空条 承太郎。
日本人離れした長身。
鍛え抜かれ引き絞られた、一流モデル顔負けのスタイル。
中世芸術の黄金比を象った彫像を彷彿とさせる、整った鼻梁の完璧すぎる美貌。
夕焼けの光で琥珀がかり、神秘的な煌めきを点したライトグリーンの瞳。
専用にコーディネートしてある前衛的なデザインの学生服が、
その魅力をより一層際立たせる。
首筋から仄かに立ち上る麝香の残り香、
ソレに合わせるように襟元から垂れ下がった金色の鎖が擦れて澄んだ音を奏でた。
彼とすれ違った女性が皆、年代を問わずに想わず振り返り、
その頬を初恋の少女のように染めていたのは夕日の所為ではないだろう。
切れ切れの雲の彼方に沈みつつある夕日が、その全てを寂寥の紅に染めていた。
そんな、何気のない日常の風景。
それは、唐突に、何の脈絡もなく終わりを告げた。
突然、「炎」 が、空条 承太郎の視界を満たした。
澄みつつも不思議と深い、白の炎が。
「……」
その最初の瞬間、承太郎は銜えていた煙草を口から落とした。
周囲をまるで壁のように取り囲み、その向こうを霞ませる陽炎の歪み。
足下の火の線で描かれる、文字とも図形ともつかない奇怪な紋章。
その中で歩みの途中、不自然な体勢で、瞬き一つせずピタリと静止する人々。
まるで突如世界が裏返ったかのような、異様な体感が身体を包む。
「……どこだ? ここは?」
彼らしくない、あまりにも平凡な言葉がその口から漏れた。
表情にこそ現れないが承太郎は承太郎なりに混乱していた。
「どこか?」と問われれば、今の今まで彼が歩いていた繁華街としか答えようが無い。
何もかもが「不自然」に覆われていたとしても、「場所」は変わっていないのだから。
しかし、承太郎が考えを巡らせる暇もなく、
「不条理」は轟音と共に来訪した。
奇妙な、モノ……が二つ、動きを止めた雑踏の中にそびえていた。
一つ、は、子供向けのマスコットのような三頭身の人形。
そしてもう一つは、有髪無髪のマネキンの首を固めた玉。
何れも、長身を誇る承太郎の倍はあった。
その「怪物」達、「人形」の方が巨体を揺り動かして
はしゃぎながら耳まで裂けるように、
「首玉」がけたたましい声を幾重にも重ねて、
横一線にぱっくりと、各
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