五十八話:意地
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ったことは体に走る魔力回路に許容量以上の魔力を一気に流し込み自ら暴走させて全身から魔力放出を行うという自爆のようなものだ。確かに相手からの攻撃を相殺し攻撃を防ぐことはできるが普通であれば死んでいる。全身全てを一瞬にして再生するアインスの力がなければ今は黒焦げの死体が一つ転がっているだけだっただろう。
「さっき落としたデバイスはどういうことなん? おとん幻術でも使えたん?」
「あれはデバイスじゃないよ。ただの質量兵器だ。以前に愛用してきた品だけどデバイスのある今は使っていない。だからおとりに使わせてもらったんだ」
「相変わらず卑怯な手使うな、おとん。そんなんやから自分の本当にやりたいことを嘘で塗り固めて自分でも分からんようになるんや」
昔から勝負事にはどんな汚い手を使ってでも勝とうとする子供じみた性格の父親にはやては溜息を吐く。本当に変わらない。変えられないからいつまでたっても苦しみ続ける。傍に居てくれる人達を失い続ける。そんな人生は見るだけで嫌になる。だから―――
「まどろっこしいのはもうええ、これで終わりや」
―――ここで終わらせる。
はやてが怪我をしていない左手を掲げるとかつてアインスから受け継いだ魔法が発動される。それは惑星のような黒い魔力の集合体。彼女が持つ広域殲滅の魔法の中でも随一の破壊力と範囲を持つそれはかつて夜天の書が破壊の象徴であったことを明瞭に思い出させる。
「……アインス、目には目をだ」
「いいだろう。全霊をもって相手をしよう」
まるで鏡合わせのように右手を掲げる切嗣。すると同じように破滅に誘う深淵の星が生み出される。本来であれば切嗣には使えない魔法であり彼の戦闘スタイルからすれば無駄に魔力を食うだけの必要のない魔法だ。それでも彼はどういうわけか真正面からぶつかり合うことを選択した。
「遠き地にて……」
「闇に沈め!」
まるで宇宙の創生のように天体がぶつかり合う為にお互いにが近づいていき―――
「デアボリック・エミッションッ!!」
―――お互いを食い潰していく。
黒い波動が迸り空と大地を埋め尽くす世界の終りのような光景の中で父娘は争い合う。
そんな二人を見守るように空からは季節外れの雪が舞い落ちて来るのだった。
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