五十八話:意地
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「死ぬ気か、おとん?」
「死ねないさ。願いを叶えるまではね」
死にながら戦うなど狂気の沙汰に他ならない。ヒュドラの毒を受け死ぬほどの苦痛を受けても不死のために死ぬことのできなかった賢者よりは楽であろうがそれでも常人の思考は既に捨てられている。そんな狂った男に対してツヴァイはある不自然な点に気づく。
「むむ、おかしいです。あれだけの魔法を使い続けて魔力切れにならないなんて」
「そういえば……おとんはそんな魔力が多い方やないのにな」
肉体を死の淵から蘇らせる魔法が低コストで使えるはずがない。しかも彼らはグレアム達との戦闘後すぐにはやて達と戦闘を開始したのだ。魔力が回復させるだけの時間などない。どこからか大量の魔力を得ているに違いない。そこまで考えてはやてはある可能性に気付く。
「おとん―――レリックを埋め込んだやろ」
「……ふ」
正解だと答えるように切嗣は微かに笑う。魔力が足りないのならそれを外部から取り込めばいい。ただ、それだけの理由で切嗣は自らレリックウェポンになる道を選んだ。
「現状の僕の魔力量ははやてにも劣らない、そもそも今の僕は人間よりも兵器に近い」
「拒絶反応は大丈夫なん?」
「問題はない。戦闘に支障が出るような手術は受けていない。持久戦をしかけても無駄だよ」
ゼスト、ルーテシアの実験データのおかげで、彼はゼストのように不完全な状態でのレリックウェポン化ではない。スカリエッティからの完璧な手術により完成度の高いレリックウェポンと化している。皮肉にもそれは最高評議会がかつて計画していた人造魔導士計画の完成形でもある。
「……そういう意味で言ったんやないんやけどな」
こちらの弱点を見つけようとしているのだと判断した切嗣に対してはやては目を瞑り溜息を零す。ただ、自分は相手の体を心配しただけであるのから。しかし。
「……まあ、ええわ。そんなら―――加減はいらんな」
はやてが再び目を開けた時にはその瞳から一切の甘さは消えていた。
「リイン、念のためにあれの準備しといて」
「はいです!」
「でも、その前に勝負が決まったらごめんな!」
何やら指示を出したかと思うと新たに自身の指に指輪を創り出すはやて。それは指輪型のデバイスであるクラールヴィントのレプリカであった。
「戒めの鎖!」
「これはシャマルの…ッ!」
指にはめたクラールヴィントから切嗣を囲うように白のワイヤーが作り出される。その拘束は非常に強力であり束ねれば象ですら動きを止めることができるだろう。しかし、一本ずつであれば引き千切ることもできる。切嗣はすぐに切らなければならない最小限のワイヤーを見極めナイフで切り裂いていく。だが、はやてがそれだけで攻撃をやめるはずもない
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