五十八話:意地
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て失ったものを失ったままにしていたわけではない。ユニゾン時限定ではあるがかつての魔道の一端を扱うことができる。
「固有時制御二倍速」
「偽レヴァンティン、シュランゲフォルム」
刃がぶつかり弾けた爆炎の中から再び襲い掛かってくる切嗣。それに対しはやては蒼天の書のデータから創り出したレヴァンティンのレプリカを振るい鞭のように叩き付けてくる。蛇のようにうねる連結刃が切嗣を飲もうとした瞬間―――
「固有時制御――四倍速」
さらなる加速をもって連結刃をすり抜ける。世界を置き去りにして男は駆ける。左手に持つナイフを娘の心臓に突き立てるために。
「はやてちゃん!!」
「なめんといてーや!」
まるで瞬間移動でもしてきたように現れ真っすぐに突き出されるナイフに対し体を捻り避ける。しかし躱しきれずに腕を掠り鮮血が宙を舞う。その血に対してか、体に走る激痛にか、切嗣は瞳を震わしながら追撃の為に右手のコンテンダーを突きつける。
「くっ…!」
避けることのできる距離ではないと悟ったはやては弾丸が起源弾か否か一瞬悩む。だが、防がなければやられると判断し一か八かシールドを張る。しかしながら、切嗣の狙いはその悩みを生み出すことだった。
「後ろだよ」
「しもうた!?」
再び四倍速をもって完全に前方に意識を持っていかれたはやての後ろに回り込む。骨が捻じれる音が聞こえ筋肉が引き千切れる。しかし、決して武器は離さずに彼女の心臓目掛け、震える引き金を引く。
「させないです! 凍てつく足枷!!」
「ちっ、後ろはあの子が守っていたか…ッ!」
だが、彼の弾丸はツヴァイが設置していた設置型凍結魔法により防がれる。対象周辺の水分を瞬時凍結させ、目標をその中に閉じこめて捕獲する効果のために起源弾相手であってもただの分厚い氷として防壁となる。
「ナイスや、リイン!」
「はいです!」
喜び合う二人に対して追撃することなく切嗣は距離をとる。本来であれば追い込むのが定石であるが体中を駆け巡る激痛には耐えられなかったのだ。まるで切嗣の方が攻撃を受けたかのように内出血でドス黒く染まる手を抑えながら血を吐き捨てる。本来であればここで死んでも何らおかしくない傷だ。だが、彼はまだ死ねない。
『Avalon.』
死にゆく体を無理やり現世に引きずり戻すように回復をする。傷は綺麗に消えてなくなるが内出血で染まった肌は元に戻り切れず褐色に染まり姿を変える。そのあまりにも強引な治療に驚いたような視線を向けながらはやてとツヴァイは声をかける。
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