第181話 劉弁と正宗 前編
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緊張したものに変わった。正宗は一拍置き口を開いた。
「荊州の鎮撫を無事に終え、皇帝陛下にご報告をと参上いたしました」
「劉車騎将軍、ご苦労であった。報告してもらえるか」
正宗は荊州における仕置きを劉弁に細かく説明した。劉弁は正宗の話に黙って耳を傾けていた。
「報告は以上にございます」
「劉車騎将軍、朕はお前に意見を聞きたい」
劉弁は正宗を神妙な顔を見ながら口を開いた。
「皇帝陛下、不肖の身ではございますが何なりとお聞きください」
「劉景升の仕置きについてだ」
朝臣達は沈黙していた。王允、荀爽は緊張した面持ちに変わった。二人は劉表をどうにかして助命を勝ち取りたいと考えている。しかし、劉弁は過日の劉表の醜態に不快感を示していた。それでも彼が正宗に意見を求めたのは、正宗が命を狙われた当事者であるからだろう。その姿勢に劉弁の人柄が表れているように見えた。
「恐れながら申し上げます。劉景升殿の死一等を免じ蟄居に処されるべきと具申いたします」
正宗は顔を伏せたまま劉弁に意見した。劉弁は正宗の意見が予想外だったのか訝しんだ。
「劉景升に罪は無いと申すか?」
「そうは申しません」
「では、何なのだ?」
「劉景升殿は蔡徳珪の謀反には関わっていないと思っております。ですが、荊州を混乱せしめた罪は重いと存じます。故に劉景升殿は全ての官位と職を辞し謹慎すべきと考えております」
「異なことを申されますな」
正宗と劉弁の会話に割り込んでくる者がいた。司空の劉弘だった。彼が董卓側に買収されたことを正宗は王允から事前に話を聞いていた。劉弘は老齢ということもあるが覇気は感じられず、欲深そうな顔つきをしていた。正宗が鋭い目で見ると腰が引けていたが、寸でのところで踏みとどまり口を開いた。劉表が賈?の申し出を撥ね付けたため、早々に邪魔するために動いているということだろうか。
司空の身で賈?の腰巾着として動く劉弘のことを正宗は心の中で侮蔑していた。
「ほう。劉司空、何か懸念されることがありましたかな」
正宗は飄々と劉弘に声をかけた。
「劉車騎将軍は蔡徳珪に三度命を狙われたと聞き及んでおります。それも荊州の中心地である南陽郡。荊州牧である劉景升殿が気づかないなどありましょうや?」
「この私が命を狙われたことは気づいていたでしょうな。だが、何者が私の命を狙ったかの特定は困難であったでしょう。三度目にて私は漸く蔡瑁の差し金と気づきました。そして、噂が広まる頃には劉景升殿は都に召還されていた。対処しようにも出来なかったのやもしれません。劉司空、貴公なら姻戚にある者が善からぬ真似を犯せば直ぐに気づくのでしょうな。流石は劉司空殿。感服いたします」
正宗は笑みを浮かべ劉弘に言うと、劉弘は「私の縁者
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