18話 鈴戦
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。
―――はっ……?
見えてしまった。
いつか見た、あの、自分を―――そうとするあの地獄が、あの花畑が、見える。
ゾワリ、とした悪寒が全身を走り抜ける。目の前の戦いなんて大した問題じゃないほどの危機。
時が止まり、視界が連続で切り替わる中、景色の向こうにそれが見える。
恐怖で精神がバラバラになりかける。
花畑の主が顔を上げる。
その視線、虫を思わせるような無機質なその視線をぶつけられ、僅かに笑いながら、呪詛を聞かされる。
「……―――」
言葉が理解できない。いや、理解したくなかった。その言葉がなんなのか。それはどうだっていい。その言葉、その魔法が自身に流れてくる。それを使えばこの程度の戦いなど、一瞬でケリをつけることの出来る最大のジョーカー。
全ての鬼一たちに平等に渡された力。そして新しく流れ込んできたこれは、まさしく不可能を可能にする悪魔めいた切り札。これを使えば自身の才能を余すことなく引き出せるだろう。
使えば身体が耐え切れず、即廃棄物コース。
使わなかったら真綿で締められるように追い詰められ、最後に敗北する。
自身の存在意義は『負けないこと』。
それなら使わない理由はどこにもない。本来ならどこにも躊躇う余地は存在しない。
何かを失うこともない。精々自分だけだ。
否、この与えられた力を使えば、もしかしたら全てを失うことになるかもしれない。この『鬼』を外に出してしまえば、自分が予想するものなどよりも遥かに危険な地獄絵図がこの世界に具現化するだろう。そんな確信がある。
『たったそれだけ』。災厄をもたらす鬼が語りかける。
―――けるなよ。
口から漏れた怒りは『自分』を思い出させる明確な怒りだった。地獄の主は不思議そうに首を傾げる。自分の弱さが生んだ身代わりがこの力を使わないことを疑問に思っているようだ。善意からの行動だったのかもしれない。
だけど、
鬼と痛みを受けた少年と怒りで動き続ける少年は抗う。
確かに勝てるだろう。この力の使い方は何よりも、本体の人形であり、残りの2人を従える自分が何よりも理解している。
だけど、そんなことより大切なことを思い出す。
自分を心から心配してくれた優しい少女のことを。
自分を心から心配してくれて叩いた少女のことを。
自分を心から心配している悲しい笑顔を浮かべた少女のことを。
自分の存在意義を切り捨てることと、あの少女を裏切ること。
3人が選んだ答えは、自分を切り捨てることになろうとも、裏切れないことだった。
時が再び走り出す。連続で切り替わっていた意識が統一され、繊細な色彩が舞い戻る。錯覚を切り捨てた。
自身が折れか
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