18話 鈴戦
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に曖昧な部分が存在する。
究極的なことを言ってしまえば勝敗はともかく、自分になんの意味もない戦いであっても、いや、『他人のための犠牲』を強いられることになっても彼は受け入れるだろう。愚かにも自分がその犠牲の対象になってもだ。
ここまでは静観していたが、織斑 一夏同様、表の月夜 鬼一では手に負えない戦いだと判断したそれは遂に現れた。
圧迫感のあるプレッシャーではあったが、それは鈴にとっては心地よささえ感じられるものだった。しかし、飲み込まれそうなほどの恐怖に変化することで思わず鈴は後退。しかし状況を5分にするわけにはいかないので、鬼一を端に追い詰めたまま僅かに距離を離す。
鈴は気づいているのだろうか? 彼女は鬼一との今までの戦いで、鬼一の間合いを正確に把握している。どこまでが安全なのか、どこまでが危険なのか、彼女はそれを身体で理解していた。
だが、それはもはやなんの意味もなさない。今の鬼一からすれば鈴の位置取りは明らかに自分にとって有利な間合いなのだから。
くすんだ景色から世界が様々な色に満ち溢れる。その鮮やかさに自分が表に出てきたことを痛感させた。
視界の隅で電流が迸っている。鬼神が限界スレスレを迎えているからなのか、それとも強引な切替に身体がショートしかけているからなのかまでは分からない。分かろうとも思えなかった。
有酸素運動と無酸素運動を繰り返したため全身は乳酸漬け。シャットダウンするほどの疲労ではないがそれよりも脳の疲労が著しい。高速戦闘の中で様々な情報を得て処理し続けてきたからか、必要な情報を選別する力や戦闘にリアルタイムで反映させることにラグを感じる。
龍砲及び双点牙月による圧倒的な攻撃力、それに対してこちらは夜叉とレール砲の2つのみ。しかもレール砲は熱暴走寸前の状態。弾丸は残り4発。鬼手は使用可能だが、衝撃砲の現在の使用方を考えれば使うことは極めて困難。鬼火の解除は不可能。更識 楯無及び織斑 千冬のどちらからの許可が必要。自身ではコントロール不可。
エネルギーシールド残量180。敵のエネルギーシールドは300オーバー。今の武装とエネルギーでは近接戦をクリアするのが大前提。しかし龍砲の牽制も突破しなくてはならない。
『先読み』は健在。疲労から五感が痺れてきているとは言っても、相手の人体から発せられる音が聞こえなくなるほどではない。ならば相手の挙動を先回りすることもまだ可能だ。先読みが出来なくなった時が自身の敗北は確定する。
ならば、その前に決着をつけるしか方法はない。そもそもこの戦いに引き分けなど存在しないのだ。エンドレスの戦いになれば持久力に不利がある鬼一に未来はない。
そして決断する。勝つための最善策を叩き出してそれに全てを燃やす。
結
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