18話 鈴戦
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酸素を取り組んだその瞬間、鉛のように重くなった身体にムチを打ちながら目を凝らす。龍砲を使うその瞬間を。
完全に鈴が有利を勝ち得た状況。当然、鈴はそれを逃さない。ここまで圧倒的な優位を持っているのに、相手の逆襲の可能性があることはしないだろう。それが普通だ。鈴もそれは例外ではない。安全にリターンが狙えるならそれに越したことはない。
故に、龍砲を展開する。停止した鬼神に絶対防御を発動させるために。
そして、鬼一はその『安全』がどれだけの猛毒なのかを誰よりも理解している。
誰よりも鬼一は、勝利というものはリスクの先にしか存在しないことを理性でも本能でも理解している。
時としてそれは、自分を顧みることはしてはいけないことも。
龍砲の球体が光った瞬間、鬼一は迷わず全力で身体を右に投げ出す。瞬時加速を使ってでもだ。
「消えっ……!?」
鈴の声は耳に入らない。鈴の視界からすれば鬼一が消えたようにしか見えなかった。
遅れて左から、身体をくの字に折るほどの衝撃が走る。それがなんなのか理解することも出来ずに鈴は吹き飛ばされた。
渾身の、捨て身に近い戦法で鈴を吹っ飛ばした鬼一は瞬時加速の勢いを殺しきることが出来ずにそのまま地面に『着弾』。なんとか受身を取ることは出来たので、シールドエネルギーに変動はほとんどない。今の瞬時加速分くらいのものだ。
しかし、身体にかかった負担は決して無視できないほどのものだ。
「―――ぜっ、は、っ、はぁ―――!」
何度も何度も苦しそうに荒い呼吸を繰り返す。肺が壊れるのではないかと錯覚するほどに、肺は酸素を求めた。同時に無茶な負担をかけた肉体が1度、強制的に本能にブレーキをかけて休ませる。追撃しようと考えたが鬼神を動かすことも出来ない。
今の鬼一は満足に立つことも出来ずに、夜叉を杖にしながら吹き飛ばした鈴を睨みつけた。
鈴の姿は見えない。鬼一と同じように地面に『着弾』した鈴は、鬼一と違って満足に受身を取ることも叶わなかったのか猛烈な勢いで砂埃を立ち上げながら転がっていった。
乾坤一擲の捨て身の戦略。失敗すれば自分だけが地面に倒れていた。
龍砲のタイミングに合わせて、悲鳴を上げる身体を酷使して瞬時加速で射線から離脱。互いの近接武器が届かない距離とはいえ、十分に近いといえるほどの距離だ。そこから全速力で移動すれば、相手の視界からすれば消え去ったようにしか見えない。
人間は自分が理解できない現実に直面した時、必ず思考が1度中断される。鬼一も鈴も例外ではない。鬼一はそれを知っているからこそ、鈴の一瞬の空白を突くことに全てを燃やし尽くした。
鈴の左に回り込んだら、後は鈴のいる方角にひたすらレール砲の弾丸をぶちまける。瞬時加速で狙いを満足に
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