18話 鈴戦
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遅れた双天月牙の一撃が衝突。単純な出力ではほぼ5分。ならば力を込めやすい体勢を作れている鬼神が有利―――!
「―――っし!!」
金属音がアリーナに甲高く鳴り響く。
重心が後ろに崩れた甲龍が弾き飛ばされ、宙に押し戻される。
その隙を見逃すほど鬼一は甘くはない。
リターンを望めるポイントは決して多くないのだ。ならば、その貴重なポイントが目の前にある以上、全力でリターンをもぎ取る。
だが、その程度で叩かれるなら鈴は激戦区の中国で代表候補生になれるはずもない。
一口に近接戦と言っても様々な強さがある。
反応速度、判断力、読み、武器を扱うスキル。
確かにどれも正解だ。
鳳 鈴音はどれも高水準を誇り、鬼一もそれは痛いほど理解している。だが鬼一は鈴を読み違えていた。
鈴はISを乗り始めて僅か1年弱。天性の才能もあっただろうが、そこに至るまでには余人には理解できないほどの努力があるのもまた事実。
鬼一は理性で自分の弱点を解析し、修正を行う。それに対し鈴は理性ではなく感覚で修正を行う。感性、センスと言い換えてもいいだろう。
1年の闘争の果てに鈴が近接戦で勝つための答え、それは。
―――嘘っ!?
その姿を見て鬼一は思わず驚愕する。確実に自分が有利を取れた形であった。その追撃のタイミングも速度も決して悪くなく、間違いなく勝てる状況。
「……甘いわっ!」
にも関わらず鬼一の眼前には『一瞬で態勢を立て直して双天牙月を振りかぶっている鈴』の姿だった。
どんな状況からでも、どんなに悪い体勢であっても最速で立て直し、相手が崩れるまで無限に食らいついて行き打倒する。
近接戦操縦者に限らず大部分の操縦者からすれば間違いなく悪夢のような光景。どれだけの隙を作り出しても、どれだけの悪い体勢であったとしても、最速で、自分が5分以上の力を出せる状態にまで立て直すのだから。
目の前の龍を倒すには根本的な地力で上回る他にない。
―――……ダメだっ! 下がれば狙われる!
体勢が5分になった段階で鬼一の敗北は確定している。だが後退して体勢を立て直そうとすれば追い詰められてあとは時間の問題。同じ敗北であったとしても、次がある敗北を鬼一は選んだ。
再度繰り広げられる高速戦闘。
無酸素で全力で互いの武器で相手を切りつけようとする。
10秒、20秒と互いの限界を競うようなギリギリの戦い。この場での勝敗が分かっていても鬼一は受け入れる他しかない。
「―――……ぷ、はぁっ!」
必死に堪え続けてきた鬼一が口を開いて肺に酸素を取り込む。取り込むその瞬間、鬼神の動きが一瞬だけ硬直。
―――……撃ってこいっ!
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