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世界最年少のプロゲーマーが女性の世界に
18話 鈴戦
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 程よく温まった身体に流れる汗を拭い、更衣室で自分のISスーツに着替える。身体を動かして温めたら今の不調がある程度改善されるかと思ったがそんなことはなく、むしろ先程よりもズレが大きく感じる。万全とは程遠いが、体調が万全の状態で戦うことの方が珍しいことを僕は知っている。今更この程度で慌てる必要もない。ズレを自覚しているならそれを踏まえた上でどのように読みを修正し、対策を考えていくかだ。

 鈴さんは間違いなく現在の僕にとって最悪の相性を誇る相手だ。ISの相性自体は決して悪くない。いや、単純なスペック差や戦力差を考えるなら鬼神の方が優勢だろう。
 だが操縦者同士の相性差が致命的に噛み合わないのだ。唯でさえ技量差が明確なのに、敗北への道を加速するための要因が存在する。

 そして、鈴さんのあの瞳。アレは間違いなく死に物狂いで勝ちに来る者の目だ。何度も見たことあるし、自分もあの目になったことは1度や2度ではない。セシリアさんの時と違って一切の油断や侮りはないな。そうなると相手の弱点を突くことは必然的に苦しくなる。

 一夏さんのように一撃で決着をつけれる代物、それこそ『零落白夜』のようなものがあるならまだ話は変わっただろうが、そんな都合の良いものはないとなるとリスク覚悟の真っ向勝負をしないといけなくなる。

 正直、先輩よりもマシだが短期戦も長期戦も勝ちの目が見いだせない。

 僕の技量で短期戦を挑むとなれば最終的にはブレードの夜叉を用いた近接戦を挑まざるを得ない。リスクを抑えた中距離戦で羅刹やレール砲、ミサイルポッドを直撃させる自信がないのだ。一夏さんとの戦いのように近距離でレール砲を用いた戦術を取れば、コンマの差で負けるだろう。鈴さんは一夏さんと違って動き出しの早さが桁外れと言ってもいい。あれだけ早い相手に呑気に狙いを定めている時間はないだろう。

 そして衝撃砲、龍砲と双天牙月の単純ながら凶悪なまでに強力な二択。これを真っ向から迎え撃ち、なおかつ突破しなければならなくなる。圧倒的な近接スキル持ちを相手に近接戦を打倒しなければならない。それに加えて龍砲の見えない砲撃にも備えければならないのだ。

 かと言って長期戦にも光明があるとは考えにくい。

 鈴さんの華奢な体格とは裏腹にそのスタミナは常軌を逸している。公開されている映像を見ただけでもその片鱗は見え隠れしていた。それに加えて数多くの競争を勝ち抜いてきただけあってメンタルの強さも相当なものだろう。必然的にメンタルを突いてミスを引きずりだすことも出来ないだろうし、やすやすとミスをしてくれるようなこともない。メンタルはともかくとして、スタミナの差には天と地の差がある。

「……はっ」

 思わず笑ってしまう。

 それは勝てるわけがない、というような諦めに似たものでは
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