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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百十七話 信頼
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よりも信頼できる男だった。何時から私は彼を疑うようになった?
彼が変わったのか? 違う、彼が変わったのではない。私が変わったのだ。何時からか他人を信じることよりも疑う事が身についてしまった。そして私と彼の信頼関係は崩れつつある……。
「レベロ、君にとって敵とは誰だ? 帝国か? それとも自由惑星同盟軍か? この国に敵と味方の区別のつかない人間がいるとは思わなかったよ。しかもそれが最高評議会のメンバーとは。呆れたよ、レベロ」
しばらくの間、互いに押し黙った。彼は心底呆れていたのだろう。そして私は、私も自分の愚かさに呆れていた……。
「君の言うとおりだ、シトレ。私達が間違わなければ、君を宇宙艦隊司令長官にしておけば今回の大敗は無かったろう……。その責任もとらず、私は財政委員長になる。君が呆れるのも無理は無い……」
「……」
「同盟は弱体化し帝国は強大なままだ。私達はもう間違う事は出来ない。同盟には間違いを許容できるような余力は無くなってしまった。だから、君の力を識見を私に貸して欲しいんだ」
「……」
「君の協力が得られないのなら私は財政委員長は辞退する。同盟は著しく弱体化した。今の同盟は財政再建と防衛体制の整備の二つを同時進行させなければならない。軍事に弱い私にはどうしても君の協力がいるんだ」
「……」
「虫の良い願いだという事は分っている。それでも私は君に頼むしかない、この通りだ、私を助けてくれ。私をもう一度だけ信じてくれ」
そう言うと私は彼に頭を下げた。
「……いいだろう、協力しよう」
「シトレ……」
「ただし、条件がある」
「条件……」
「そうだ。君が新政権の中でどの程度の力を持っているか確認したい」
「……」
「レベロ、これから私が言うことを君が新政権に受け入れさせることが出来たら、君のブレーンになっても良い」
「分った」
彼の条件は多分、いや間違いなく厳しいものだろう。それでも私はチャンスを貰ったのだ。この機会を必ず活かして見せよう。この国のために……。
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