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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百十七話 信頼
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になった。シトレ、私のブレーンになってくれないか、軍事面でのアドバイスをして欲しいんだ」

しばらくの間沈黙が落ちた。シトレは何か考え込んでいる。私の提案を検討しているのだろうか? やがて彼は両手を組み合わせてその上に顎を乗せるとおもむろに話を始めた。

「どういう風の吹き回しだ? 詰め腹を切らされる私に同情したのか?」
「シトレ、同情なんかじゃない。君を高く買っているから助けて欲しいといっている」

シトレは私の言葉に楽しそうに笑い出した。だが、その笑いにあるのは嘲り、怒りだろうか。どういうことだ?
「シトレ?」

「高く評価しているか、心にも無い事は言わんで欲しいな」
「本当だ。今回辞任するのも君のせいじゃない。運が悪かっただけだ」
「よしてくれ、レベロ」

シトレは不機嫌そうに吐き棄てた。そしてこちらを見ると不思議な笑みを浮かべた。嘲笑、それとも冷笑だろうか。

「私は君がトリューニヒトと敵対しているとばかり思っていた。だがそうじゃなかった。君はトリューニヒトと組んでいる、そうだな?」
「何を馬鹿な!」

気付かれた? 私は思わず大声で否定した。シトレはそんな私を冷たく見据えている。

「君はトリューニヒトと組んで私の宇宙艦隊司令長官就任を潰した。そして絶対やめろと言ったドーソンを推した。私が知らないとでも思ったのか?」
「……」

「ドーソンが私に自慢げに話してくれたよ。私が宇宙艦隊司令長官になれなかったのは政府から嫌われているからだと。そして今度はトリューニヒトを助けると言う」
「……」

「信頼していない人間をブレーンにしてどうする? 意味が無いな」
「……君は強すぎるんだ、シトレ。政府に不満を持つものが君を中心に集まるかもしれない。そんな君に実戦部隊を預ける事は出来なかった」

自分の声がどこか他人の声のように聞こえた。知られたくなかった。シトレのクーデターを恐れる、それは今の同盟の政治がクーデターを起されかねないほど酷いものだという事だ。その政治の一端を私は担っている……。

「だからドーソンを選んだか。彼ならコントロールできる、御しやすいと考えた……。その結果がこの大敗か、ドーソンが阿呆なら君らはなんと言うべきかな? レベロ、君はどう思う?」

シトレの皮肉を帯びた声が耳朶を打つ。シトレの言うとおりだ。ドーソンのコントロールに失敗した私達に彼の無能を責める権利は無い……。

「これだけの大敗を喫した統合作戦本部長なら誰も担ごうとはしないだろうな。おまけにもう直ぐクビになる。私は無害になったということか?」
「シトレ、そんな言い方はよせ……」

思わず私の口から出た言葉は弱々しいものだった。そして今の私は彼の顔を正面から見ることが出来ずにいる。彼は私の親友だった。誰
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