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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百十七話 信頼
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とになった」

「……」
「今回の大敗で主戦派は力を失うかもしれん。しかし、政治家が軍を権力維持のために利用しようとする限り似たような悲劇は起こるだろう」

フォーク准将が、いや宇宙艦隊司令部の主戦派どもがあの馬鹿げた作戦案をサンフォード議長に持ち出さなくても、政府は権力維持を目的とした出兵を命じたかもしれない。

そうなれば今回と同じような悲劇はやはり起きただろう。軍事を理解しない政治家が存在する限り、戦争を理解しない政治家が存在する限り、悲劇は続くに違いない……。

「軍人は政治には関わるべきではない、それは政治が軍を正しく使用するならばの話だと小官は思います。政治が軍を己の都合に合わせて利用しようとするならば軍はそれを防ぐために動かなければならないでしょう……」

「……」
「軍は両刃の剣なのです。扱い方を間違えれば今回のような事態を引き起こす事、場合によっては己自身の身に降りかかる事も有るということを政府に認識してもらわなければ……」

たかりかねたようにボロディン提督が私の言葉を遮った。
「総参謀長、まさか、貴方はクーデターを……」
「クーデターですか、それも一つの手段ではあります」

「総参謀長!」
「一つの手段と言ったまでです、ビュコック提督。唯一の手段と言ったわけではありません。小官は軍事力で政府を自由に動かす事は下策だと考えています」

「……別な手段があると言われるか?」
「そう私は考えています」

そう、別な手段は有る。そのためにも先ずこの四人の心を一つにしなくてはならない。軍を政治家たちの権力維持の玩具にしないために……。


宇宙暦796年 9月 12日    ハイネセン  自由惑星同盟統合作戦本部 本部長室 ジョアン・レベロ


私が本部長室に入るとシトレは本部長席で忙しそうに書類を見ながら決裁をしていた。
「忙しそうだな、シトレ」

「敗戦処理だ、誰もやりたがらん。しかし、私は本部長なのでな、逃げる事も出来ん」
シトレは顔を上げる事も無く本部長席に座ったまま私に答えた。

「シトレ、これからどうするつもりだ?」
「どうもせんよ、後始末をつけるだけだ」
シトレはチラと私を見たが、直ぐ書類に視線を戻し決裁を続ける。どうも私は歓迎されていないようだ。

「いや、私が聞きたいのは本部長を辞任したらと言うことだが」
「……故郷に戻って養蜂でも始めようと思っている。死んでいったものには済まないと思うが」

「シトレ、軍を辞めたら私を助けてくれないか?」
「……」
「最高評議会のメンバーは全員辞任した。トリューニヒトが暫定政権の首班として政権を担う事になった」

私の言葉にシトレは書類を見るのを止めこちらを見た。
「私は財政委員長として彼を助ける事
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