4部分:第四章
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第四章
「もう今にも」
「わかっている。だが、だ」
「神がここに来いと仰ったのだな」
「同胞達と共にだ」
そうしたとだ。モーゼは青いその空を見上げながら兄に答える。
「だからだ。もう少しだ」
「同胞達にはか」
「ここで神に逆らえば全てが無駄になる」
モーゼの顔は強張っていた。
「エジプトから逃れたことも、ここまで来たことも」
「だからこそ今は」
「本当にあと僅かなのだ」
時が来るのはだ。そうだというのだ。
「兄さん、本当に少しだけでいい」
「わかった。皆を落ち着かせよう」
「そうして欲しい」
何とかだ。アロンは同胞達を宥めていた。そしてだ。
モーゼは待った。その待つ間は僅かな筈だった。しかし。
その時は永遠に感じられた。今の彼にとっては。
だがそれでも彼は神を信じ続けた。必ず姿を現してくれると。そしてだった。
遂にその時が来た。不意にだ。声がしてきたのだ。
「我が民達よ」
「!?この声は一体」
「まさかと思うが」
「神か!?」
「神なのか?」
声はモーゼにだけ聞こえたのではなかった。アロンにも、そして他の者達にもだ。今シナイ山に入っている彼等全てにだ。聞こえたのだった。
その言葉を聞きだ。彼等は顔を見合わせた。そのうえで言い合うのだった。
「神は本当におられたのか」
「モーゼに仰っていたのは事実だったのか」
「そして我等をいつも見て下さっていたのか」
「そうだったのだな」
彼等はここでわかった。そしてだ。
その彼等にだ。神の声はさらに言ってきたのである。
「私の声が聞こえているな」
「は、はい」
「聞こえています」
その通りだとだ。返す彼等だった。
「この耳にしっかりと」
「聞こえています」
「ならだ。私を信じるか」
神は彼等に問うた。
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