第一部 PHANTOM BLAZE
CHAPTER#1
悪霊に取り憑かれた男と炎髪灼眼の少女
[10/12]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ンドの咆吼によって、均衡は突如破られた。
承太郎のスタンドが唸りを上げて全身を脈動させ、手にした鉄壊刃の投擲体勢に入る。
精密なフォームを寸分の狂いもなく形成しながらも、
同時に視線は正確に着弾地点を射抜いている。
人体の正中線最上部。
シャナの 「眉間」
その目の前のスタンドの動きに対し、シャナが執った行動、は。
「……」
いともあっさり、承太郎に対してその小さな背を向けるという行為。
「!!」
慮外の行動に虚を突かれたのか、
承太郎のスタンドは投擲体勢を保ったままその場で停止する。
承太郎とスタンドに背を向け、ジョセフとホリィの佇む場所に
静かに歩いていく少女の紅い髪と瞳は、
やがて焼けた鉄が冷えるようにゆっくりと元の艶のある黒に戻っていく。
「貴様ァッッ!! 何故急に後ろを見せる!! こっちを向きやがれッッ!!」
両者(?)共に猛っているので、まるでスタンド自身が喋っている
かのような錯覚を見る者に覚えさせた。
現在所謂 『暴走状態』 で、危険極まりないとはいえ
宿主の高潔な精神を多少なりとも受け継いでいるのか、
スタンドは少女の背後から不意打ちを仕掛けるような真似はしない。
シャナはこの承太郎とスタンドの問いを無視し、
彼には見向きもせず手にした剥き身の大太刀をコートの中、
左腰のあたりに収める。
切っ先から、後ろにまで突き抜けるような勢いで押し込まれた刀が、
そのままコートの中にすっぽり消えてしまった。
刀身は少女の身の丈ほどもあったというのに、まるで本当に『魔術師』のようだった。
シャナはそのままジョセフの居る壁際までトコトコと歩いていき、
そして瞳を閉じて再びコンクリートの床に腰を下ろす。
「ジョセフ。見ての通り。 “アイツを牢から出したわよ” 」
「!!」
承太郎は自らの足下を凝視した。
いつの間にか、スタンドが捻じ曲げた鉄格子の隙間から
靴が鉄の仕切りを跨いでいた。
「……」
意図せず漏れる、深い吐息。
そして興が殺がれたのか、スタンドは承太郎の存在の裡側へ、
ゆっくりと潜るように戻っていく。
アレだけ凄まじい存在感を誇示して発現していたのにも関わらず、
消えた後にはその余韻すらも残らなかった。
「してやられたというわけか?」
誰に言うでもなく無頼の貴公子はそう一人語ちる。
「そうでもないわ。私は本当におまえを病院送りにするつもりでいた。
正直、破壊力だけは予想外だった」
「だけは」というのを殊更に強調してシャナが応えた。
やがてスタンドが完全に承太郎の中に立ち消え、
手にしていた鉄の刃が落下して重い音を立てる。
「もしオレの悪霊が、この鉄棒を投げるのをやめなかったら、どうするつもりだった?
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ