第一部 PHANTOM BLAZE
CHAPTER#1
悪霊に取り憑かれた男と炎髪灼眼の少女
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ない
強靱な精神で眼前の悪霊を睨み返す少女にジョセフは微笑を浮かべると、
「かまわん。想う存分ためしてみろ!」
余裕たっぷりに応じる。
「了・解ッッ!!」
少女はそう叫ぶと、大刀をいきなり高速で内側に引き抜いた。
「ッッ!!」
突如力の均衡が崩れ、その対象を失った承太郎の「悪霊」は
逆に自分自身の力に引っ張られて大きく体勢を崩し蹈鞴を踏む。
その隙にシャナは悪霊の手から愛刀を回転させて引き剥がし、
バックステップで距離を取る。
そして柄から利き腕を放し、指を立てて高々と頭上に掲げた。
その先端に、蛍のような儚い色彩を持つ光が幾つも集まり
やがてより強く発光、点滅する。
その刹那。
承太郎の全身を押さえつけていた煙状の炎が瞬時に荒縄状に変化、
まるで蛇のように蠢いて巻きつき、彼の呼吸器を塞いだ。
「ぐっ!?」
あまりといえばあまりな眼前の変異に、
鋭敏な彼の頭脳もその演算処理速度が追いつかない。
そしてシャナは指先に振り子のような弾みを付け、
素早く先端を真一文字に薙ぎ払う。
空間に疾走る、紅い閃光。
その動きに炎の荒縄が連動し、起点の見えない力に引っ張られた承太郎は
牢の鉄格子に勢いよく叩きつけられた。
衝撃で鉄芯がギシギシと軋んだ音を立てる。
「ぐ……!お……ぉ……! い……息……が……ッ!」
できねぇ、と最後に言葉にならない声で叫んだ承太郎と同時に、
再びシャナに掴みかかろうとしていた 【悪霊】 はいきなりガクンッと膝を折り、
吸い込まれるように元の身体の裡へと戻っていく。
「悪霊が引っ込んでいく……熱で呼吸が苦しくなればお前の悪霊は弱まっていく。
いまこそ、その 『正体』 を言おう!
ソレは “悪霊であって悪霊ではないモノ” じゃッ!
承太郎! お前が悪霊だと思っていたモノは!
お前の生命エネルギーが創り出す、パワーある映像なのじゃッ!
「傍に現れ、立つ」というところから、 そのヴィジョンを名付けて
『幽波紋!!』」
「スタ……ンド……?」
消え去りそうになる意識を懸命に繋ぎ止めながら、
承太郎は祖父の言葉を反芻した。
「人間のお伽噺にあったわね……?
寒風では旅人は衣を纏うだけだけど、熱さは音をあげさせる……
おまえ? 此処から出たくなった?
今なら 「出してください」 って心の底からお願いすれば、考えてあげないでもないわ」
勝ち誇った表情に小悪魔的な微笑みを浮かべた美少女は、
目の前で煩悶し続ける無頼の貴公子に向け、澄んだ声で勧告する。
「テメ……ェ……! いい加減にしやがれ……ッ!
オレがこっから 「出ねえ」 のは!
この悪霊が知らず知らずのうちに他人へ 「害」
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