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STARDUST唐eLAMEHAZE
第一部 PHANTOM BLAZE
CHAPTER#1
悪霊に取り憑かれた男と炎髪灼眼の少女
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ば)しその大刀の本刃に魅入られた。
 それほどまでに、その刀は美しかった。
 長い鋼の刀身は、まるで冷たい水で濡れているかのよう。
 人を殺傷する事を最大の目的としながら、
同時に人心を誘惑し官能に近い感情すら想起させる、
そんな危険な甘さがその刀には在った。
「峰だぞ」
(!)
 不意に、少女の胸元のペンダントから声があがる。
 重く荘厳な、男の声。
「こいつ次第よ」
 少女は感情を込めず、胸元の「喋る」ペンダントへ返した。
 そし、て。
 少女の艶やかな黒髪が風もないのにわずか靡き、
いきなり多量の紅蓮の火の粉を撒いて灼熱の光を灯す。
「!!」
 まるで自分の周囲の時間が数秒まとめて消し飛んだかのような、
驚愕の「事態」に想わずライトグリーンの双眸を見開いた
無頼の貴公子の眼前で。
 舞い落ちる炎の飛沫の向こう側で。
 二つの、強烈な光がこちらをを見ていた。
 火の粉を撒いて靡く紅い髪と同じ、灼熱の輝きを燈した真紅の瞳が。




【3】

 脈絡のない少女の変貌に承太郎が声をあげる間もなく、
その張本人は大刀の重量など意に関する事無く軽やかに跳躍し、
そして承太郎の胸元に大刀の峰を鋭く逆袈裟に撃ち込んだ。
「う、ぐぅッッ!?」
 鍛え抜かれた承太郎の胸板で無ければ、
間違いなく胸骨陥没コースまっしぐらの激しい打擲(ちょうちゃく)だった。
 いきなりの空中からの打撃によりベッドの上から弾き飛ばされ、
コンクリートの床に転がった多量の電化製品を跳ね飛ばしながら、
承太郎は牢獄の罅割れた壁に激突する。
「ぐ……うぅ……ヤ……ロウ……!」
 (とどこお)った呼気がようやく吐き出され、頭蓋が揺らぐ。
 ブレる視点を意志の力で無理に繋ぎ合わせ、承太郎は壁を支えに立ち上がろうとした。
 が、次の瞬間。
「!?」
 得体のしれない力が承太郎の身体を押さえつけ、
その全身を牢獄の壁面に縫いつけた。
「こ……これ……は……ッ!?」
 腕に、足に感じる熱。
 肉と革の焦げる匂い。
 煙のような炎が、まるで生き物のように自分の身体を這い回っていた。
 ブスブスと燻る音を立てながら、炎は次第次第に承太郎の身体を侵蝕していく。
 信じがたいことだが、自分が、今、“炎に焼かれている事” を嫌でも認識できた。
(う……ぐ……ぐ……ッ! ほ……“炎”……か……!?
や……焼け……る……! オレの……腕が……焼けて……いる……ッ!
こいつは……!? まさか……あのガキの……【悪霊】の力か……!?
こいつも……! オレと同じ……『取り憑かれたヤツ』 なのか……ッ!?)
「パパ! 承太郎に何をするのッ!? あの子の身体に火がッ!」
「火? 火なんて見えるか?」
「なんだ? 
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