第一部 PHANTOM BLAZE
CHAPTER#1
悪霊に取り憑かれた男と炎髪灼眼の少女
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来なかったのだ。
「見えたか? 気づいたか? これが 【悪霊】 だ」
承太郎はジョセフの小指を指先で弾く。
鉄片が扉にぶつかって耳障りな音を立てた。
「オレの傍に近づくンじゃあねぇ……残り少ない寿命が縮むだけだぜ……」
そう端的に祖父に告げ、実孫はもう話は終わりだとでもいうように背を向けた。
(なんてやつだ……このワシをいきなり欺くとは……)
ジョセフは十年ぶりに出逢った、成人前の実孫へ畏怖に近い感情を覚えた。
自分が知っている孫の姿は、まるで女の子と見紛うような
あどけなく可愛らしい少年だったというのに。
目の前の孫はもう立派な青年、否、精悍な一人の “男” として成長していた。
十年という 「時間」 がこれほどまでに人間を変えるモノか、
感慨と共に一抹の淋しさを感じながらベッドの上で片膝を抱え込む承太郎を見つめる。
その孫はもうジョセフに興味を失ったのか、
再び白いシーツの上で紫煙を燻らせていた。
「むうぅ……」
呻きのような嘆息がジョセフの口から漏れる。
(おそらくアイツは……“このコト” を……
あの 【悪霊】 を自分自身だけで抱え込むつもりなのだ……
他人に頼る等という事は、端から思考の隅にも存在すらしなかったらしい……)
奇妙な事だがソレは、血の繋がりで殆ど確信に近く「実感」出来た。
もし自分が同じ立場に置かれたなら、
考えの相違はあれど結果的にはおそらく同じ選択をするだろう。
しかし、“だからこそ” 承太郎に、
自分の【悪霊】」を実際に体験させなければと思った。
近い将来、必ず訪れる 『危機』 の為にも、
いま、ここで、身体で理解する必要がある。
「君の出番だ」
ジョセフはパチンッと右手で弾く。
その合図と同時に牢獄前の壁へ背をつけて座っていた黒コートの人物が、
静かに立ち上がり承太郎のいる牢屋の前に立った。
フードを被っているのでその表情は覗えない。
「最近知り合った友人の一人だ。
名は愛刀の銘からとって “ニエトノノシャナ”
長いので単純に 「シャナ」 と呼んでいるがな。
シャナ、孫の承太郎をこの牢屋から追い出せ」
そのジョセフの言葉に承太郎はやれやれと、
プラチナメッキのプレートが光る学帽の鍔で目元を覆う。
「やめろ。何者かはしらねーが、目の前で「追い出せ」と言われて
素直にそんな 「優男」 に追い出されてやるオレだと思うのか?
イヤなことだな。逆にもっと意地を張って、なにがなんでも出たくなくなったぜ」
承太郎の言った優 「男」 という言葉に、
シャナと呼ばれた黒コートの人物の肩がピクッと震える。
「コイツ、ムカつく……ねぇジョセフ? 少し荒っぽくいくけど良い?
きっと自分の方から「出してくれ」って、
泣いて喚いて
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