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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百十六話 帰還
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う。
「では、フェザーン侵攻と反乱軍勢力への侵攻は別々に行なう事になるか……」
私の言葉にエーレンベルク、シュタインホフ両元帥の顔が歪む。
時間が空けば反乱軍も防戦の準備を整えるだろう。余り面白い状況ではない。手の打ちようが無いというか八方塞というか……。やはりあの男が居らんと不便じゃ。戻ってくるまで後半月か、短いような長いような、困ったものじゃの……。
宇宙暦796年 9月 11日 イゼルローン要塞 ドワイト・グリーンヒル
イゼルローン要塞に遠征軍が戻ってきた。無残なものだ、出征時には九個艦隊、十三万隻の威容を誇った遠征軍が今は四個艦隊、それも僅かに三万隻程度しか残っていない。
修理の必要な艦、負傷者を纏めて乗せた艦から順に要塞へ入港する。そして各艦隊司令官も入港してきた。私は宇宙港で彼らを待つことにした。それがせめてもの礼儀だろう。
四人の提督たちが艦を降りてきた。ビュコック、ボロディン、ウランフ、ヤン、皆顔色が良くない、疲れきった表情をしている。当然だろう、これだけの大敗だ、しかも味方を見捨てての撤退。敗北感、罪悪感、疲労、心身ともに参っているに違いない。
しかし、味方を見捨てて撤退しろと命令を出したのは私だ。彼らが抱えている罪悪感は私が背負うべきものだ。彼らが気に病むことではない。彼らが私に気づいたようだ。私は敬礼をして彼らを出迎えた。
「これは総参謀長、御苦労様ですな」
「ビュコック提督、遠征、お疲れ様でした。皆さんも本当にお疲れ様でした」
私はそう言うと頭を下げた。この程度で彼らの苦労をねぎらえるとは思っていない。それでも私は頭を下げた。
「総参謀長、頭を上げてください。総参謀長が補給部隊を使った囮作戦を用意してくれたので大変助かりました。あれで敵を振り切ることが出来たのです。そうでなければ、損害はもっと酷くなっていたでしょう」
ヤン提督の言葉に三人の提督が頷く。しかし私にしてみれば恥ずかしい限りだ。どうみても補給部隊は救えなかった。どうせ救えないなら遠征軍を救うために犠牲にしてしまえと考えた破れかぶれの策だ。感謝されるほどの事ではない。
「ところで、総司令官閣下は司令部ですかな?」
ビュコック提督の疑問はもっともだ。たとえどのような結果であろうと総司令官が配下の諸将をねぎらわないという事は無い。
特に今回の戦いはあきらかに総司令部の判断ミスが遠征軍を敗北させた。本来なら私と共にこの場にドーソン総司令官の姿が有って良い。そして彼らに詫びるべきなのだ。それが軍人として、人間としての最低限の誠意だろう。
「総司令官閣下はあの敗戦以来、部屋に閉じこもったままです」
隠しても仕方が無い、いずれ分かることだ。あの敗戦以来ドーソン総司令官は部屋に閉じこもった
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