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偶像
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第一章

                          偶像
 この時へブライの民達は砂漠の中で途方にくれていた。
 エジプトから脱出し割れた紅海も渡った。そして食べるものはマナをもたらされた。
 だがそれでもだ。彼等は彼等のシオンの地に辿り着く前に遂に力尽きたのだ。
 老人や子供達がしゃがみ込みだ。こう口々に言った。
「もう駄目だ」
「これ以上は歩けないよ」
「力が出ない」
「疲れたよ」
「いや、もう少しだ」
 しかしその彼等にだ。指導者であるモーゼはだ。
 彼等の周りを歩き回りそのうえでだ。こう告げて回った。
 荒野の周りにあるのは岩だけの山だけだ。その山を見てもだ。
 何もない。本当に周りには何もない。草木も獣達もだ。彼等以外には何もないのだ。
 その何もない荒野の中でだ。モーゼはしゃがみ込んだ同胞達に言ったのである。
「もう少し頑張ってくれ。シオンの地はあと僅かだ」
「けれどもう動けないんだ」
「御年寄りや子供達はもう無理だ」
「これ以上は動けないぞ」
「どうにもならないんだ」
「食べるものはある」
 モーゼが言うとだ。天からだ。
 あの白いものが降ってきた。マナだ。そのマナを指し示して言うのだった。
「この通りだ。マナがあり神は雨をもたらしてくれる」
「いや、食べるものに水があってももう無理だ」
「我々は疲れたのだ」
「どう疲れたのだ」
「心が疲れたのだ」
 それがだというのだ。
「もう心が疲れてだ」
「動けないのだ」
「シオンの地が近いのはわかる」
「だがそれでもだ」
「心、何故だ」 
 モーゼは彼等に言われてだ。途方に暮れた。
 彼は言うその神が降らせるマナの中で。
「神はこうして我等に助けの手を差し伸べておられる。神は確かにおられるのだぞ」
「ではお姿を見せてくれ」
「神のお姿を」
 彼等が言うのはこのことだった。
「おられて助けて下さるのなら是非だ」
「そうして頂きたいのだ」
「しかしだ」
 モーゼはその厳しい同胞達に告げる。
「神はおられるではないか。だからこそマナを」
「我等にもたらして下さる」
「そうだというのだな」
「そうだ。これが何よりの証だ」
 その白い雲に似たマナを実際に手にしてだ。モーゼは言う。
「これ以上の証が何処にあるのだ」
「しかし我等の前に姿を現してはくれない」
「そうではないか」
 同胞達はそれでも言う。
「それではマナを降らして下さってもだ」
「雨により水をもたらして下さってもだ」
「神がおられて我々を助けて下さっているのか」
「確かに信じられないのだ」
 これが彼等の言い分だった。
「とてもだ。それはだ」
「信じきれない」
「あの紅海のことがあってもなのか」
 モーゼにとってはそ
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