2部分:第二章
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第二章
そのことを見てだ。女帝は言うのだった。
「何としてもあの男を成敗します」
プロイセン王を。そうするというのだ。
「それで宜しいですね」
「はい、わかりました」
「ではこの戦争で、です」
「プロイセンを必ず」
女帝は戦争を決意していた。プロイセンとの戦争をだ。彼女はピョートルとは全く違う考えだった。勢力を拡大するプロイセン、そして女性蔑視主義者のプロイセン王を倒すつもりだった。
かくして七年戦争がはじまった。周囲を囲まれ孤立していたプロイセンは忽ち窮地に陥った。オーストリア、フランス、ロシア等に同時に攻め込まれてだ。
今にも降伏しそうな状況だった。しかしだ。
ピョートルはその状況を見てだ。そのひしゃげた顔を顰めさせて言うのだった。
「駄目だ、この戦争は駄目だ」
「プロイセンとの戦争はですか」
「断じてですか」
「そうだ。即座に止めるべきだ」
プロイセン崇拝者の彼は当然ながら戦争反対論者だった。この戦争に限っては。
「あの方に何かあってはいけない」
そこには政治も戦略もなかった。感情、いや盲信だけがあった。
その盲信のままだ。彼は主張するのだった。
「戦争なぞ他の国にさせておけ」
「では殿下はですか」
「あくまでこの戦争は即座に停止すべきだと」
「そう仰るのですね」
「その通りだ。私が皇帝になればだ」
太子としてだ。こう言うのだった。
「あんな戦争は即座に止めさせるぞ」
公言して憚らなかった。そして実際にだ。
女帝は死の床にあった。彼女は今にもこの世を去ろうとしていた。しかしだ。
彼女は己が忌み嫌うプロイセン王、そしてロシアの脅威となるであろうプロイセンをだ。その死の床にあっても何としても倒すべきと主張し続けていたのだった。
「なりません。あの国は、そしてあの男はです」
「陛下、軍は今にもプロイセンを倒します」
「ですから落ち着いて下さい」
周りは倒れようとしている女帝を何としても落ち着かせようとしていた。しかしだ。
女帝は尚もだ。プロイセンへの憎しみを露わにさせて言うのだった。
「ピョートルもです。黙らせるのです」
「殿下をですか」
「そうされよと」
「あれは馬鹿です」
はっきりとだ。女帝は言い切った。
「何もわかっていません。政治のこともプロイセンのことも」
そしてだった。次に言う言葉は。
「あの男のことも」
「プロイセン王のこともですか」
「おわかりになられていないと」
「ピョートルはあの男を崇拝し愛していますがあの男はそうではありません」
プロイセン王は違うというのだ。
「何もわからないまま皇帝になろうとしているのですから」
「だからですか。殿下は」
「何としても」
「皇帝に。皇帝にしてはなりません」
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