ターン51 冥府の姫と白き魂
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になるところを、どうにかといった様子で持ちこたえる。
「へへ、ちょっとしくじっちまってな。お前相手に誤魔化したって仕方ねえからはっきり言うが、俺はもう長くないみたいだ」
「長くない、って……どういうこと?早く……医者、に……って……」
そういう夢想の声が、次第に弱くなっていく。頭上を飛び回っているヘリに助けを求めようとして、あることにようやく気が付いたのだ。つい先ほどまで島全体を包んでいたヘリの飛行音が、いつの間にかぴたりと止んでいる。ヘリだけではなく、そこら辺を飛んでいたはずの海鳥の声さえも聞こえない。咄嗟に上を見ると、確かにそこにヘリはあった……空中に静止して、ピクリとも動かない状態で。
「……これも貴方が?だってさ」
思いのほか冷静な声が出た、と彼女は思った。そして、そんな冷静な思考をする余裕がある自分にもおや、と思う。明らかに異常な事態に巻き込まれているにもかかわらず、なぜ心の中には驚愕の感情が芽生えないのだろう。
まるで、この名前も知らない男がこんな状況を作り出すのを前にも見たことがあるかのように。
「いまさらとぼけんなっての、もうこっちだって時間は……無駄口叩く余裕は、さすがに俺にも無えな」
それはつまり、肯定ということだろう。神出鬼没なところといい、改めて目の前の男の人知を超えた力を思い知る。それでは、それほどの男がこれほどまでに追い込まれるとは、一体何が起きたのだろう。そんな目線に気づいたのか、ひらひらとおどけて手を振ってみせる。
「お前に関係あるこっちゃねえよ。こっちの話だ、仕事のな。それに、もう終わった話だ。転生者の集団は全滅、俺たちの被害は俺1人。結果としちゃあ、悪くねえさ」
目の前の男が何を言っているのか、夢想にはまるで理解できない。だが彼はそんな夢想の困惑にまるで気づくことない。というよりも、もはやそこまで注意を払うだけの余裕がないのだろう。よろよろと体勢を立て直そうとした結果ギリギリのところで保っていたバランスをかえって崩し、背後の倉庫の壁にもたれかかる形でずるずると座り込む。彼が背をついた箇所には、本人も気づいていないようだがべっとりと血の跡が付いていた。
「悪いな、今日ここに来たのは他でもねえ。さっきも言った通り、俺はもう長くないわけだが……思えば俺も、長いことデュエルばっかりやって来たわけだからなぁ。どうせ死ぬなら最後に1回、全力で悔いのない勝負ってもんがしたくなったのさ。それが、これまで俺と戦ってきたこのデッキに対する最高の供養にもなるだろうしな。となると、俺にとってその相手は1人しかいないって寸法よ。なあ、う……いや、『今は』河風夢想、だったか?せっかく次元を越えて会いに来たんだ、最期の頼みぐらい聞いてくれよ」
何を馬鹿な、と言うこともできた。そ
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