ターン51 冥府の姫と白き魂
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遊野清明が別の次元における天王星でウラヌスと、ひとりぼっちの死闘を繰り広げていた―――――その少し後。かつてデュエルアカデミアが存在していたその場所を前に、静かに立ちすくむ人影があった。
「清明……」
白を基調としたアカデミア女子特有の制服に、肩までかかる青い髪。校舎という障害物が消えたことで島の向こう側からダイレクトに吹き付ける海風にその髪を揺らされながらも、特に気にした様子もなく立ち続ける。彼女の名は河風夢想……SAL研究所攻略の際には暴走したあげく行方不明となった清明を探すため、単身島中を探し回っていたことでたまたま大規模な校舎の神隠しの難から逃れる格好となった幸運な生徒の1人である。
「……」
ふと彼女が上を向くと、雲1つ無い青空には何機もの飛行機やヘリコプターが旋回している。それを見ながら、おそらくあれは今回の事態を受けて派遣されたデュエルアカデミア親会社、海馬コーポレーションの物だろう、とぼんやりとあたりを付ける。
そして、そんな彼女の推測はただの勘ではない。事実、驚異的な情報統制能力によりこの事件からすでに1日が経過している今でさえあらゆる新聞、テレビニュースにおいてこの事実は揉み消され、ひた隠しにされている……1人や2人ならまだしもこれだけの規模を誇る建物と人数に対してそんなことができる権力があるとすれば、それは海馬コーポレーションぐらいのものだ。恐らく裏では、そうして稼いだこの時間のうちになんとかアカデミアと生徒たちを元に戻す方法はないかと会社お抱えの学者たちが頭を捻っていることだろう。
「よう」
「また貴方?だってさ」
そんな彼女の背後から、気安く気楽な調子で声がかかる。だが彼女はその声の主を一瞥すらせず、まるで最初から彼がここに来るのがわかっていたかのように返答した。先ほどまで誰もいなかったのに、などという当然の疑問すら、その声の調子には含まれていない。
そのまま、たっぷり数秒が経過した。最初に声をかけた男がわざとらしく咳払いをすると、ようやく彼女もそちらへと振り返る。
「……!」
どこか心ここにあらず、といった様子だった彼女も、さすがに目を丸くする。その男は、確かに彼女の記憶の中、つまりは1年前の進級前後の時期であり、また修学旅行での童実野町の出来事にあるそれと同一人物だ。だが、彼女の記憶と比べてなんと変わり果ててしまったことだろうか。着ている服がいたるところに焼け焦げがつき穴が開いているならば、それを着ている男自身はさらに消耗している。痩せこけた頬や服に開いた穴から見え隠れする全身には無数の傷や火傷の跡が痛々しく刻まれ、ただ目のみが以前と変わらぬ光を放っている。気力は衰えていないのだろうが、遠目に見ても今にも限界を迎えそうなその体が、ぐらりと揺れた。そのまま倒れそう
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