3部分:第三章
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第三章
「だって。猫じゃない」
「そうだよ、猫だよ」
「タマは可愛い猫なのよ」
「猫でもね」
ここでだ。難しい顔で親に言う新太だった。何時の間にか父親まで来てタマと遊んでいる。
「ちゃんと躾けないと。家に来てからそんなこと一度もしてないけれど」
「おトイレはちゃんとしてるだろ?」
「爪とぎだって決まった場所でするから」
「それで何で躾ける必要があるんだよ」
「もう充分じゃない」
「どうなっても知らないよ」
新太は二人に首を捻ってそのうえで告げた。
「躾してないとね」
「大丈夫大丈夫」
「何ともないわ」
こう言ってだ。両親は息子の言葉を聞き流してそのうえでタマと遊んでいた。そんな状況だった。
そしてタマは新太の予想通りにだ。増長していった。
テーブルの上に平然とあがりそのうえだ。そこで寝転がる。
食事中もそうするタマを前にして新太は怒る。手を挙げて叩こうとする。しかし。
「こら、そこまでするな」
「怒る必要ないわよ。叩くまではね」
一緒に食べている親達からの言葉が来たのだった。彼に対して。
「ちょっと言えばいいんだよ」
「そうそう。どきなさいってね」
「じゃあお父さんとお母さんが言えば?」
新太はあくまでタマを甘やかす両親にこう返した。憮然とした顔で。
「そうすれば?」
「んっ、どきなさい」
「そこにいたら駄目よ」
何でもないといった顔で自分達の前で寝転がるタマに言う。しかしだ。
ベッドの上でどべっと身体を思いきり寝そべらせているタマはだ。そのままだ。
寝たままだ。全く動こうとしない。そのタマを見てだ。
新太はいよいよ手を挙げようとする。しかしここでもだった。
「そのうちどくからいいだろ」
「そうそう。落ち着きなさい」
「本当にどうしろっていうんだよ」
その寝転がるタマを見ての言葉だった。
「どんどん態度がでかくなって我が物顔になって」
「だから猫だからいいだろ?」
「私達の御飯には何もしないからいいでしょ」
「そういう問題じゃないから」
確かにタマは家族の食べものには何もしない。しかしだ。
そのあまりもの傲慢さに辟易する彼だった。そしてそれは彼の部屋でも同じだった。
パソコンをしていれば画面の上に来る、ベッドでよりによって枕まで使って寝る、アイドルの写真集を置けばその上にスフィンクスの様に座る、まさにやりたい放題だ。
怒ろうとしてもその都度両親がそこまでするなと言う。しかもその両親にもだ。
タマは傲慢だった。ベッドを占領し御飯をくれと足に噛んでくる。新聞を読んでいるとその上に来るとだ。相変わらずの悪さだった。こうしたことが続きいい加減にだ。
新太はうんざりとしきった顔でだ。両親に言ったのだった。
「もうさ」
「もう?」
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