17話
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、ちょっと気になったので、えー、ネットでちょっと調べたといいますか」
「……ふーん、簪ちゃんのことを、ねぇ……」
楯無の顔から先ほどまでの笑みは全て消え、感情を感じさせない表情と声色で呟いた。しかし、視線は鬼一に合わせられたまま。そんな初めて見る楯無の表情に身体が凍りつく。先ほどまで感じていた熱は既に吹き飛んでいた。
表情と声から楯無が何を考えているのか全く予想も出来ないため、鬼一にとってはただ胃の痛い時間が続く。処刑人がどんな処刑を下すのか、ひたすらに恐怖が長く感じた。
そんな鬼一とは余所に楯無は目の前の愚か者の所業をひとまず置いておいて、自身にとって唯一の家族であり、そして自分の根幹である妹のことを話すかどうか考えていた。
そして、決めた。
「ねぇ、鬼一くん?」
「……はい」
果たしてどんな判決が下るのか、恐怖に震える鬼一は静かに、吐き出すように返事する。
「ちょっと私と簪ちゃんのお話を聞いてくれないかな? 以前、君の家族に関するお話を聞いてからどこかで話そうとは思ってたんだけど」
そんな予想外の言葉に、思わず鬼一は間の抜けた表情になってしまった。
―――――――――
「とまあ、こんな感じかな? 鬼一くんはどう、思った?」
「……」
疲れたように身体から力を抜くたっちゃん先輩。
たっちゃん先輩から見て簪さんに対する思いの一部や、自身の行ってきた行為の数々が先輩自身の口から述べられた。先輩は抑えているようだったけど口々からは隠しきれないほどの感情が滲み、鮮やかな愛情があることを感じさせてくれる。ちょっと独善的かもしれないが。いや、偽悪的というほうが正しいのかもしれない。
妹を誰かに傷つけられたくない、苦しい思いをさせたくない、そんな誰にでもありそうな感情に従い、この人はひたすらに、がむしゃらに頑張って走り続け、己を削ってきたことが感じ取れた。
先輩の話から感じられる感情の中には後悔のような感情があるように感じる。だけどそれは自分の妹のために自分を削ったことなんかではなく、もっと相手のために行動出来たのではないか? もっと素直に考えてあげることが出来たのではないか? そんな自分を責めるような痛みがあった。
先輩は間違っていた、無駄だったのかもしれない、そう言っていたけど僕には到底そうは思えない。
なぜなら彼女の行動は全て『妹を守りたい』という自分の感情にどこまでも素直に従って行動してきたからだ。自分に降りかかる痛みや苦しみとかそんなものはどうでもいいと。ただ自分のことなんかよりも、唯一の家族を守ることの方が遥かに大切だから。
想像だけど、この人にとっては自分にとっての救いや報いなんてのは心底どうでもいいと考えているよう
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