17話
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そんな呑気な声と共に。
「あああああああああっ!?」
鬼一は楯無と共にベッドの上を転げる。ベッドのスプリングが大きく悲鳴を上げた。視界が二転三転し、最後にはベッドのシーツに顔を埋めることになった。
『隣』からは楯無のくすくすと小さい笑い声が聞こえた。その声はイタズラに成功した子供のようだ。
大きく音を立てる心臓。あまりの驚きに全身から汗が吹き出る。そんな身体とは余所に鬼一の頭が冷静になるにつれて、楯無に身体を掴まれてベッドにダイブさせられたことに気づく。
ガバリ、と頭を上げて隣に視線を向ける。
視線の先にはベッドの枕元を照らす小型ライトに照らされた楯無の視線を細めた笑顔。鬼一と同じように横になっており、その距離はとても近い。それも当然。IS学園のベッドは1人用にしては大きいが所詮は1人用だ。そんなベッドに2人も乗れば必然的に距離が近くなる。
その笑顔に震え上がりそうになり、背筋にゾワゾワとした何かが走り抜けた。
同時に悟る。
これは詰んだかもしれないと。
ならば、逃げなければ。
「……ねえ鬼一くん」
互いの吐息が感じる距離で楯無は甘い声で囁く。じんわりとした熱が鬼一の思考に染み渡る。身体もその熱に犯されたのか鬼一の思考に反して動いてくれない。いや、実際に動けない状態であった。
楯無の右腕が鬼一の左肩に置かれ、左腕が頬に触れる。その右腕に力は入っていないように感じられるが、鬼一の身体はまるで万力か何かに固定されたように動かすことが出来ない。楯無が逃げ道を塞いでいたのだ。
「……さっきまで何をしていたかおねーさんに教えてくれないかなぁ?」
身体の芯に鉄棒でも打ち込まれたような錯覚を覚えた。この声に逆らったらどうなるか、ここまで生活でおおよその予想は考えられる。また泣かされるかもしれない。
震える声で鬼一は呟く。
「……べ、別にたっちゃん先輩が気にするようなことじゃないでふ」
思わず噛んでしまうほど今の鬼一は動揺していた。その反応から楯無は自分のカンが間違っていないことを感じた。
笑みが濃くなる楯無。その笑みにもはや絶望感さえ感じる。
鼻先が触れそうになるほどの距離に、楯無は自分の顔を鬼一に近づける。赤く美しいルビーのような瞳と鈍く輝く黒曜石のような瞳が見つめ合う。お互いの顔が映っているのが分かるほどの近さ。
「……ふーん、じゃあなんで、鬼一くんはそんなに焦っているのかなぁ?」
カタカタと指先が震える。
もはや逃げ道はない。
どうあがいても勝ち目がない。
「……えっと、その、ですね」
そして鬼一はその答えを告げる。
「……えっと、その、実はたっちゃん先輩の妹さんと話しまして
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