17話
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状態なのだから。
「……何やってるんですか?」
僕の声にセシリアさんが返事しようとして口を開けたが、その前に鈴さんの声が僕の耳に入ってきた。
余りにも予想を超えた発言に僕は驚くことになる。
「あ、鬼一。ようやく来たわね。ちょっとお願いがあるんだけどさ、私と模擬戦しない?」
……え?
一瞬、言っている意味が本気で分からなかった。今ここで僕と鈴さんが試合をするということがどういうことなのか分かっているのだろうか?
「あー……安心してよ、別に私との試合経験を活かして一夏を強くするのは別に問題ないからさ。別に試合しなくてもアンタなら私への対策を考えてくるでしょ? 世界最年少にして世界王者のプロゲーマー、月夜 鬼一という操縦者(プレイヤー)は。その対策がもっと深いものになるならそっちにだって悪い話じゃないでしょ?」
分かっていて、か。僕が鈴さんを調べたように、鈴さんも僕を調べたのか。
確かにここで鈴さんと僕が試合したなら、僕は間違いなくその対策を一夏さんの今後のトレーニングに活かすだろう。活かさない理由はない。
だけど、自分の不利を承知でこんなことを言えるのは難しい。少なくとも鈴さんには不利なことでしかないのだ。そんなことは代表候補生の鈴さんだって嫌というほど理解しているはず。対策される怖さは半端なものではない。それを超えるのも、それを越えられないというのもだ。
鈴さんに何の意味があるのか? この戦いに。
鈴さんの視線が一瞬だけ一夏さんに向けられる。その視線を受けて一夏さんは困惑の表情が強くなった。
……僕個人としては断るつもりはない。身体の調子が悪いことを差し引いても、この模擬戦にはメリットが多い。だけど、あくまでもこの時間の主役は僕じゃない。
「……一夏さん、この戦いを決めるのは貴方です。このアリーナを使える時間はあくまでも貴方のトレーニングのためにあります。貴方が良いと言うのであれば、僕は受けようと思っています。断る理由がありません」
僕の言葉に一夏さんはぎこちなく頷いた。……なんだ? 一夏さんの様子が昨日よりおかしいような気がする。
一夏さんの頷きを了承と捉えた鈴さんは力強い笑みを浮かべて僕に指を突きつけた。
「なら決まりね。鬼一もアップや準備があるだろうから30分後に始めましょう」
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