17話
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そして、そんな中で勝ち得た自信というのは隠すことが出来ないものだ。必ず身体から発せられる。
セシリア・オルコットも。
更識 楯無も。
織斑 千冬も。
山田 真耶も。
鳳 鈴音も。
IS関係者だけではなく、鬼一がいた世界。e-Sportsの世界にいた人間たちも全員そうだった。大小の差はあれども、全員がそれを身体から発している。
にも関わらず更識 簪にはそれがない。鬼一はその違和感が心の片隅に引っかかっている。凄まじいまでの違和感。その違和感を鬼一は気づくことが出来ない。
更識 簪は究極的には『自分の勝利』などどうでもいいのだ。彼女は自分と比較され続けてきた姉である更識 楯無にコンプレックスを抱き、そのコンプレックスに苦しめられている限り簪が『自分』を最上位に置くことはありえない。常に別人が自分より上にいる以上、別人に振り回されるだけの存在だ。
自信を得るためには自分を常に最上位に置かなければならない。つまりは自分を確かなものとして認識し、人の影を追いかけて自分を『薄れ』させている限り意味がない。そんな状態でどれだけ困難な勝利を重ねても、自信というものは身につかないのだ。
鬼一からすれば信じ難い事実、同時に気付き得ない真実。
「ただいま、鬼一くん」
その声に鬼一は思わず飛び上がる。楯無の声の方向に視線を向けず、目にも止まらない素早さでパソコンの電源を落とす。落としたあとは何事も無かったかのように楯無に振り返る。
その奇行に眉を潜める楯無。
「たっちゃん先輩、おかえりなさい。今お茶入れますね」
「……鬼一くん? 今何してたの?」
「……別になんでもないですよ。紅茶でいいですか? パックもんですけど」
鬼一はそう言って楯無から視線を切り立ち上がる。そのまま机の上に置いてあるポットに近寄り、そこに置いてある2つのカップの中にお湯を注ぐ。楯無の発言は徹底してスルーの姿勢だ。それも当然だろう。言えるはずがない、
―――たっちゃん先輩の妹さんを調べていました、なんて口が裂けても言えるわけがないだろ。
変態の烙印を押されても文句の言えない所業をしたことに鬼一は深く後悔する。後悔、というよりも安易な行動だったと反省した。少なくとも身内の人間が同室にいるのにそれはない。
お茶を入れ始める鬼一に足を止めて疑惑の眼差しを向け続けていた楯無だったが、突然何か閃いたように明るい笑顔になり、そしてすぐに目を細めて猫目になる。
抜き足差し足忍び足。鬼一の背後に音もなく忍び寄る。鬼一はそのことに気づかない。鬼一は注ぎ終えたカップを2つを机に置いて振り返ろうとした。
瞬間。視界が反転した。
「……それー!」
楯無の
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