第八話 仮面舞踏会だよミューゼル退治 そのC
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の貴族との間に高い壁があるように、有爵貴族の中にも子爵以下と侯爵以上との間には高い壁が存在し、壁の向こう側とこちら側ではできることに天地の差がある。お館様が属する伯爵という階級は両者を分けるいわば分水嶺で、下位の伯爵は上位の子爵とそう変わらない。お館様、マールバッハ家は分水嶺の向こうの存在だが、押しも押されぬ存在というにはまだ力が戻っていない。
『中途半端な権勢では、力では駄目なんだ。絶対的な力と繋がりを持たなければ!』
何とかして上級貴族とコネを作りたい。俺の切実な思いは文通を交わす友人が増えるほどに募っていった。
悩みが深まる一方で、自信を深める出来事もあった。あの悪魔とゆかいなしもべたちが暗躍したのか大神オーディンの恩寵か。俺が行った家宰様への原作主要提督の親たちの推挙は、最高の結果を産んだ。
休暇が最後の一週間に入って最初の日に、俺とブルーノは父上とフォン・クナップシュタイン共々お館様のところに呼び出された。
「急なお召しなんて一体何があったんだろう」
「まさか、皇妃陛下のお気に召さないことでもあったとか…」
顔を青くしたブルーノの言葉に俺も唾を飲み込んだ。原作とは運命が──ソリビジョンの映像によると人相までも──まるで変わってしまっているとはいえ、人間の本質がそうそう変わるわけもない。目下の者に不始末があれば、嵐のように激しくお怒りになるであろう。
『もしかして、俺の情報に何か欠落が、あの三人に重大な瑕疵があったのか?』
あり得ない話ではない。騎士会館でもマトリクスでも十分以上に調べはしたが、そこは原作でラインハルトの知遇を得た三人の親である。脛に貴族社会から見ての傷を持っていた可能性はある。もしそうなら、全てはおしまいだ。亡命するならフェザーンか叛徒のところか。どちらを父上にお勧めすべきか、その前にあの悪魔とゆかいなしもべたちに一矢報いる方法はないか、しばらくぶりに後ろ向きな思考を巡らせながら、俺はお屋敷の門をくぐった。
『おいおい俺がそんなせこい遊びをすると思ってんのかねえ…せっかくこさえた花火が不発じゃ観客が暴動起こすだろうがよぉ』
聞き慣れた声は左から右に流れ、内容は吟味する以前に全く頭に残らなかった。
「おお、アルフレット、待っていたぞ」
心配が杞憂だったそれどころか大当たりを引き当てたということがと分かったのは俺たちを乗せた地上車が本館の車寄せに着いて、震える足が地面を踏んだ直後だった。中から飛び出してきた父上とも懇意のお館様の従者と下僕たちに囲まれた俺とブルーノは衣装部屋に連れて行かれ、幼年学校の制服から郎党の正装に着替えさせられて家臣の末席に並ばされた。
「二人とも安心しろ。いや、喜べ」
「えっ?」
「もうすぐご使者がいらっしゃる。お前たちにもお褒めの言葉を賜るかも
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