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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百十五話 苦悩
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かれたぞ」
とミッターマイヤー提督に言われた。思わず足が止まった……。

「し、司令長官にですか」
俺とベルゲングリューン! 落ち着けフォルカー。
「うむ。俺もロイエンタールも頼りになる幕僚を紹介してもらえて感謝していると答えた。言っておくが本心だぞ」
明るく答えるミッターマイヤー提督が恨めしい。

「恐れ入ります」
「卿とベルゲングリューン准将はアルレスハイム星域の会戦で司令長官と一緒だったな? 懐かしいのかな?」

「さあ、どうでしょうか」
穏やかに笑う提督に答えると急いで傍を離れ、自室に向かった。

懐かしい? そんなはずは無い! 俺もベルゲングリューンも司令長官とは碌に話さなかったのだからな。別に意地悪をしたわけではない。何を話して良いか判らなかっただけだ。だからつい司令長官を避けてしまった。

司令長官はミュッケンベルガー元帥、エーレンベルク元帥の秘蔵っ子だった。何と言っても士官学校卒業から二年で少佐になったエリートだ。変に話しかけて取り入ろうとしているんじゃないかと思われても詰まらんし、司令長官から元帥達に妙な士官が居ると言われるのも御免だ。

そういうわけで俺たちは司令長官とは話をしなかった。司令長官は俺たちと話しをしたかったのだろうが、俺たちが話したがらないのが判ったのだろう。最後は自分の席で静かに座っていた……。

司令長官はメルカッツ提督とクレメンツ提督には笑顔を見せたけど俺たちには必要最小限の会話だけで笑顔は無かったな。自業自得だが少し寂しかった。

今考えれば少しくらい話しても良かった……。相手はまだ十八の子供だったんだからな。俺たちも少し意識しすぎた。おかげで気まずい関係になってしまった。しかしあの当時はそんな余裕は無かった。上層部に特別扱いされる司令長官に対する反感が有ったと思う。

特別扱いだ。あの艦隊の司令官は老練なメルカッツ提督、参謀長と副参謀長は司令長官が士官候補生時代の教官。おまけに司令長官は幕僚勤務の経験なし、艦隊勤務の経験なしの素人。

どう見ても軍上層部が司令長官に幕僚勤務、艦隊勤務を教えようとしているとしか思えない。実際クレメンツ提督が熱心に教えていた。エリートって言うのは本当に別格扱いなんだとつくづく思った。ベルゲングリューンと二人でよく愚痴ったものだ。

アルレスハイム星域の会戦後も凄かった。巡航艦ツェルプスト艦長兼第1巡察部隊司令だ。軍務尚書の意向が有ったらしいが、司令長官に艦長の経験と艦隊指揮の経験をさせようという事だろう。おまけに副長がワーレン提督だ。

ヴァンフリートは言うまでも無い。大佐なのに一個艦隊の参謀長を務め、副参謀長にはミュラー提督だ。これもミュッケンベルガー元帥の意向が有ったらしいが全く別格の扱いだ。


司令長官が宇宙艦隊
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