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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百十五話 苦悩
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同盟を再建するんだ」
帝国暦 487年8月30日 9:00 ミッターマイヤー旗艦ベイオウルフ フォルカー・アクセル・フォン・ビューロー
艦橋にミッターマイヤー提督が入ってきた。小柄な身体がきびきびと動く。表情も明るい。問題は無かったようだが、本当に大丈夫だったのだろうか。ミッターマイヤー提督が提督席に座るのを待って声をかけた。
「閣下、司令長官は如何でしたか?」
「大丈夫だ、ビューロー准将。卿が心配するような事は何も無かった」
「そうですか」
提督の言葉に緊張が緩んだ。あるいは厳しい叱責を受けるのではないかと心配したのだが杞憂だったようだ。
帝国軍は今シャンタウ星域に集結している。昨日遅くにミッターマイヤー艦隊はシャンタウ星域に戻ってきた。その時、今日の八時に各艦隊司令官は総旗艦ロキに集まれとの命令が出たのだが、気になる噂が入ってきた。
〜司令長官は今回の戦果に満足していない。司令長官は敵の殲滅を望んでいた。追撃の打ち切りは不本意で、特に逆撃を受けたミッターマイヤー提督に強い不満を持っているのではないか。〜
どうやら司令長官はこの会戦の勝利に喜んでいないらしい。敵に大打撃を与えたと思うのだが、司令長官はより完璧な勝利を望んでいたのではないか? そんな憶測が噂を生んだようだ。
「司令長官は我々に良くやったと言ってくれた。敵の八割近くを損失させた。十分な戦果だと。特に我々追撃部隊にはご苦労だったと労ってくれた」
「それは、何よりです」
嬉しそうに話す司令官の表情には一点の曇りも無い。どうやら本当に杞憂だったようだ。
「俺は敵の小細工にしてやられたからな、その点について司令長官に詫びたのだが、ミッターマイヤー提督のような用兵巧者でも失敗をすると分って安心した、と笑いながら言われた」
「……」
司令長官は戦果には満足しているらしい。だとすると何故喜ばなかったのだろう? 気になる。
「閣下、司令長官は何故今回の大勝利にも喜ばなかったのでしょう?」
俺の疑問にミッターマイヤー提督は表情を改めて答えてくれた。
「ミュラー提督が言っていたのだがな、司令長官にとっては未だ戦いは終わっていないのだろうと」
「終わっていない、ですか……」
「うむ。オーディンに戻って帝都が安定しているのを見て始めて終わるのではないかと」
「なるほど」
「追撃を打ち切ったのもそれが有るかもしれん。あまりオーディンを空き家にするのは問題だろう」
「確かにそうですな」
なるほどオーディンか。敵は反乱軍だけではない、国内にも居るという事だな。むしろこちらのほうが厄介か、表向きは味方だ。
とりあえず問題は無い。提督の傍を離れようとすると
「司令長官に卿とベルゲングリューン准将の事を訊
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