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授業なんてどうでもいい、なくてもいい
多田くんはーー
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 一言で済ますなら、多田家は豪邸だった。

 道路沿いに建つ5階建てで庭つきの一軒家は明らかに目立っている。それに輪をかけて目立つ理由としては、多田家の両端が廃屋であるところだろうか。倫子によると、多田家の裏側に廃工場および廃線跡があり、少し離れたところに住民公認の廃れた幽霊公園があるらしい。終末をとっくに迎えた建物たちに群がられる多田家は、封建社会に生きる官僚の住処のようだ。彼らが持っていた希望の成分を食らっていったに違いない。

 私が完全なる偏見の目で多田家を見ていると、階段の先にある玄関から学ランを来た奴が出てきた。無論、多田くんである。

 「お、来たなお前ら。そんな予感がして何となくドアを開いた俺、さすが」

 一言目から自画自賛とは、さすが多田くん。

 桐山くんが言った。

 「多田、チャリどこ置けばいい?」

 「あー、そこの車の隣に積めといて」

 駐車場には二台の自動車があった。一つは黒の大型自動車で、最近CMでよく見かける新車だ。もう一方は少なくとも日本の車ではなかった。恐らく外国産の高級車だろう。車はともかく、電車や飛行機などのメカに疎い私は、多田くん家なら高い車なんだろうなという感想をもって考えるのを終わりにした。

 「ささ、入ってよ。もう何人か来てるからさ」

 多田くんに勧められて家に入る。まず玄関から広い。普通の一軒家に比べて幅に余裕がある。掃除が行き届いた廊下を進むと、多田くんは左手にあるドアを押した。中はリビングで、革張りのソファに何人か知っている顔がいた。

 常盤くんが最初に声をかけてきた。相変わらず中途半端な長髪がキモい。

 「なんと!西尾と三ツ橋まで呼ばれていたのであるか!それならそうとHRで呼び止めてくれれば良かったものを」

 「あんたといたら私たちまで変人に思われるじゃん」

 倫子が鼻で笑ったのを常盤くんが「しぇしぇしぇぇ!」と奇声を上げて悲しんで(?)いた。やっぱりキモい。だが、彼は遠目で見ていれば面白い存在なので特に嫌いではない。

 照原くんが「とりま座れば?」と言った。ひとまず私と倫子は照原くんがいる列に座った。常盤くんサイドには、同じクラスで書道部の塩屋くんが座っている。

 遅れてリビングに入ってきた桐山くんは「よお」と一声かけて、倫子の隣に座ろうとした。しかし、そこで常盤くんが桐山くんに猛烈な視線を与え、桐山くんの動きを封じる。最終的に、溜め息を吐いた桐山くんが常盤くん側のソファに身体を埋めた。常盤くんがうんうんと頷いて満足げに言った。

 「さすが桐山氏!話が分かる方だ!」

 「お前が真ん中だと塩屋が可哀想だ。お前ら交換した方がいいよ」

 「桐山氏!そうやって朕を除け者にするというなら、こちらもそれ相応の対
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