多田くんはーー
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応をせねばならんぞ!」
「対応っていうのは?」
「桐山氏に嫌われないよう、人気アイドル本山由実ちゃんのスカートヒラリー券をプレゼントするぜよ!」
「いらねえよそんなもん」
「しぇえええ!!」
リビングがどっと沸く。桐山くんとはほぼ毎日顔を合わせているのに、とても新鮮な気分だった。けれど、私は斜め前に座る桐山くんの苦笑いする顔を見ながら、なぜか枯渇したような気分に駆られていた。
*****
てっきりバーベキューは庭でやるのかと思っていたが、そうではなかった。多田くんが向かった先は、5階の屋上だった。すでにバーベキューの体裁が整えられており、後は手分けして動いて食べるだけだった。
各人それぞれブレザーを脱いだりシャツに着替えたりする中で、多田くんが私の横にすっと立った。顔を上げると、多田くんは自信ありげな笑みを湛えていた。
「どうしたの、多田くん」
「本番だぜ三ツ橋。あの攻略書、ちゃんと読んで頭に刷り込んだ?」
もちろんだ。書いてある内容を噛み締めて、イメージトレーニングも繰り返した。自分が動く軌道を何度も何度も確認した。後は実戦で吐き出すのみだ。
でも、私は多田くんに聞きたいことがある。『アイツ』って誰なの、という質問。これまで何回か多田くんに話しかけようとした。しかし、その度に多田くんは何かを察したように私の近くから姿を消した。結局、その答えは知らないままである。今がチャンスだ。私はそう思った。
「ねえ、多田くん……」
「ちょっ、おいバカ!」
多田くんが慌てた声を上げたのはそのときだった。彼の視線を辿り、私は思わず言葉を失った。
「うおおおおぉぉあああっつ!」
照原くんが燃えていた。正確にいえば、服と頭が燃えていた。
「おい早く服脱げ!」
火はまだ小規模だが、時間に比例してどんどん燃え上がる。火はあらゆる物を躊躇なく、冷徹なまでに黒焦げにしてしまう。
急いで周囲を見渡した。完璧に揃っていると思われたバーベキューセットだが、肝心の水がなかった。飲み物もまだ出していないようだ。もう一度辺りをくまなく見回すが、火を消せるような物は見当たらなかった。どうする。どうすればいい。
照原くんが必死にもがいて服を脱ごうとしている。だが、その動きはおぼつかない。それを見た瞬間、私の中で何かが光った。
私は踵を返して走り出した。「三ツ橋!」という多田くんの声が背後から聞こえる。だが、私の取ろうとしている行動が分かったのか、多田くんは声を張り上げた。
「照原!服千切ってうつ伏せになれ!」
そうだ。合っている。私が目指しているのはそれだ。
私は鉄柵付近に並んでいる植木鉢に手をかけた。そし
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