多田くんは意外と真面目らしい
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おく。
「頭痛持ち?」
「いや、違うけどさ。なんつーかもう、勉強じゃないのに疲れるって嫌だわ」
なんのことだか分からないが、多田くんは珍しく疲れているらしい。照原くん辺りの友達と授業をサボっておいて、他に何を疲れるんだろう。
多田くんは「ふっ」と息を吐いて机から降りた。そして私に目を合わせると、黒板の方に向かった。
教卓前に立つと、彼は回れ右をして私に振り返った。そして、大きな声で宣言した。
「講義をします!」
「張り切ってるね」
「そうでもしないと頭痛に負けちゃいそうで際どいマジで」
多田くんは白のチョークを手にして、カツカツと音を立てながら字を書いていった。箇条書きだ。意外と字が上手くて驚いた。前に友達から聞いた話を思い出す。勉強をしない人って、普段からあまり字を書かないから一字一字を丁寧に書くんだって。だから勉強してる人より字が上手いらしいよ――。
まさにその通りだった。
「よし、できた。三ツ橋これ写メって毎日1回読めばたぶん上手くいくよ。やったな!」
ふっと我に返って、私は黒板に書かれた文を見た。写真を撮る前に、一文ずつ目で追っていく。
『マニュアル人間攻略書!!
1. 自分の立ち位置を考える!周りのやつの動きを確認する!
2. 誰かに与えられた仕事をこなすんじゃない、自分に仕事を与えるんだ!
3. 周りが正しいわけじゃない!自分を信じてその役割を全うしろ!
4. 分からなかったら素直に誰かにヘルプミー!
5. 仕事が終わりそうだったら周りを見て、次の行動を模索しろ!
これができれば、三ツ橋はマニュアル人間を辞められるよ!(たぶん)』
気合いの入ったデカい文字で書かれたそれは、意外と本気のアドバイスだった。私は写真を撮るのを忘れて、一文一文を身に染み込ませるようにじっと見つめていた。
実のところ、図星だった。私が問題だと思っていることや他人に言われたことがそっくりそのまま書かれていた。それほどまでに、私は典型的なマニュアル人間と化していたわけだ。
人に何べんも質問するのは申し訳なく、かといって何をすればいいのか分からない。とりあえずテキパキ動いている人の合図待ちで、逆に片づけのときは黙々と作業を始める。片づけはすなわち終了だから、目指しているところが明確だから、誰にも聞かなくたって動ける。
特に、3は私の頭を揺さぶるくらいに響いた。心の中で何度も反芻した。そうだ。私は自分の行動にどんな間違いが含まれているかが不安で、他人の許可なしに動くのを恐れていた。間違ったら、連帯責任で他人に迷惑をかけることになるから。じゃあどうすればいいのよ。間違えずに動くにはどうすればいいのよ。その答えが、多田くんによってあっ
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